始まり
手軽に読めるように短めに分けて投稿します。
『傷つけられるのが怖いからって、逃げてたら何も始まらないよ』
どこかの誰かがそう言った。
そんなのはただの綺麗事で実際は、立ち向かった所で傷つくのがオチだ。
これから記すことは全て失敗談だ。つまり、ここから得るものはない。
騒々しいどこにでもあるような居酒屋。そこでどこにでもあるような合コンが開かれていた。
その、ある日の合コンで、恋に落ちた。所謂一目惚れだ。
彼女は、長く綺麗な黒髪を持った女性だった。澄んだ瞳、白い肌、小さく可愛い口、引き締まった腰、スカートから覗く長い足。全てが僕を魅了した。
中高を男子校で過ごした僕にはいきなり声をかける度胸もなければ、コミュ力もない。もはや、運命的な出会いをするしかない。
つまり、僕はと言うと、緊張でとても彼女とは話せず、他の女性と話していた。
というか話しかけられていた。その人は、派手な感じの女性で、近寄ってきて、自己紹介を始めた。
「私、希っていうの。よろしくね!敬語は無しでいいよね?」
と、なんとも距離の近い人だと感じていると、そこから怒涛の質問責めにあった。名前、出身、誕生日、血液型、恋愛遍歴、…etc
他にも見え見えのお世辞に対して、謙遜しつつ、無難な返事をしていた。もちろん「彼女」の方をチラチラ見ながら。
すると
「あの子みたいなのがタイプなの?まあ男性受けする感じだもんねー?」
と、彼女を見ながら突然いわれ、
「いやいや、そんなことないよ!」
大きめの声でツッコミを入れてしまった。恥ずかしい。
「隠してもわかるよー。チラチラ見ちゃってさ。紹介してあげようか?実は私、あの子と同じ高校で…
「え!ホント!」
食い気味に、自分でも引くほど食いついてしまった。恥ずかしい。
「……。」
なんとも言えない目を向けられた。つ、つらい。
話を変えるためにも、興味を持ちつつ質問した。
「え、えーと、仲良しなの?」
と、白々しい笑顔で話を振った。いい加減にその目をやめてほしいと心の中で思いながら。
「ふーん、ごまかすんだ。まあ、そうだよ。今日の会に呼んだのも私だから。感謝してよね。」
と、満面の笑みを向けられた。
「うん、まあ、ありがとう?
どんな感じの娘だったの?」
と、よく分からない感謝を述べつつ、自分の好奇心を満たすための質問を投げた。
「気になってるのはもう否定しないのね?」
痛いところを突かれた僕は目を逸らしながら頷いて、肯定を示した。
「そうね彼女は、見た目通りの娘だったよ?
「彼氏はいたことないし、勉強出来るし、先生には信頼されてる子だったよ。」
と、彼女について教えてくれた。
その話を聞いて僕はより彼女に陶酔していくようだった。
「へえ、すごい子なんだね!でも、なんで彼女と君が仲良くなったの?」
落ち着いて考えると失礼な質問をした。だが気になるのも仕方ないだろう。それ程までに二人の接点は想像に至らないのだから。
「私みたいなのが友達なのが信じられないってこと?
言ってくれるねぇ。まあ幼馴染って感じかな。まあ確かにそうじゃ無かったら接点ないだろうね。」
と少し傷ついたように言われ罪悪感を感じ、そういうつもりじゃなかったんだよ…と弁明すると
「わかってるよ。でも、昔から言われてたから気にしてないよ。」
と、希は昔からそうしていたように笑って言った。
少し沈黙していたので、
「どうしたの?」と聞くと
「彼女にアタックするの?」
と少し寂しそうな顔で聞かれた。
なぜそんな顔をするのかわからなかったが、僕は肯定した。
すると希は一言
「私みたいなタイプはダメなの?」
と笑顔で聞いてきた。
僕はからかわれているのかと少し思ったが、その顔は少し強張っているように感じた。
ここで、改めて希の顔を見ると、雰囲気で派手だと思っていたが、整った顔立ちで何か純粋さのようなものを感じた。
僕は希の意図が分からず笑いながら
「からかわないでよ」と言ってしまった。なぜだか少し後悔を感じていた。
希は顔を和らげて笑った。
その後は「彼女」の話をたくさん聞き、友人として協力してもらえると言うので連絡先を交換し、
「彼女」を紹介してもらうことになった。
希と僕と彼女との三人で話をすることになり、彼女の事を色々と知るに至った。
彼女との会話の中で色々と知るにつれて、僕はますます彼女への思いを募らせた。
彼女と仲良くなれたら、付き合うことが出来たなら、そんなことばかり考えて、ほかのことは全てどうでもよくなる程だった。
会は大した問題も、それ程までの盛り上がりも、何もなくそのままお開きになった。もちろん彼女と連絡先は交換した。会が終わった後も希の協力で彼女を駅まで送り、楽しい気持ちでその日を終えた。
有難うございました。