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言の式

作者: 金芳 奏

 紅葉。緑色と赤色の間、緑色と黄色の間。そのどちらにも属さない、儚くも綺麗なあの色。

 それに、今までと、これからの自分の言葉を重ねた。



 言葉。

 自分の感情を、意思を伝えるために必要不可欠な存在。


 放った刹那に生を受け、生を受けた刹那に消えていく。それは、天から降り注ぐ雨粒のようで、水面が乱反射した陽の光のよう。儚いその存在に、幾度魅せられて惑わされたのだろう。その存在にどれだけの時間を奪われたのだろう。

 時に美しく、時に醜く、様々な形で私たちの記憶と歴史に刻まれている。そして、これからの記憶と歴史を創っていく。


 言葉は単純で複雑だ。その端々に温度と感情、景色を、その瞬間の全てを抱擁している。ひとつでも、ふたつでも、それ以上でも言葉だ。だから難しい。同じ意味を成していても、数が変わるだけで、形が変わるだけで伝わり方さえも変わってしまう。


 伝えたいことを言葉に変えるのは簡単だ。それに合った意味の言葉を見つけるだけでいいのだから。言葉を見つけるのだって、方法は溢れている。そして、それを何某かの方法で表せばいいだけだから。文字として形にしても、音として響かせてもいいのだから。


 感情。それと意思。それが悪意でも善意でも、誰もがそれを探す時がある。感情に従う者、感情に背く者。時に急ぎ靴を脱ぎ捨てるように、時に乱れた靴を整頓するように。それぞれに、それぞれの意思が、感情がある。それが例えどんなものでも、誰もが持ち合わせている。


 伝えたいこと。言葉は有限で、感情は無限だ。だからこそ感情なんて言葉として表しきれるわけがない。それでも、表したいと思ってしまう。難しさと複雑さが絡み合う。少なすぎても、多すぎても駄目で、簡単すぎても、複雑すぎても駄目だ。


 感情と意思を言葉にする時に伴う苦悩。それにぴったり合う言葉を探す。足しては引いて。捨てては拾って。掛けては割って。それを繰り返す。感情と意思の鮮度が落ちないように、ひたすらに言葉が舞い散る。

 鈍感な私たちには感じることのない、大きな苦痛が脳を駆け巡る。


 そして、その言葉を表すんだ。膨大な時間を、その刹那に。


 伝える術を持っているが故の苦悩と苦痛。

 でも、伝えなくては分からない。許すことすら出来ない。分かり合うためにも、許し合うためにも、それらを懐柔しなければならない。

 そして、それらを懐柔するために、たくさんを見て聞いて感じて、思うままに経験を積むんだ。


 種が水を受けて芽を出し、陽の光を浴びて茎を伸ばす。そして、風に揺られながら花を咲かせるように。

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