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第九話 試験

ウイルスを倒したVBVS。その後は...?

 

 ----------------------------------------------


 ウイルス2体を倒してから、一週間が過ぎた。あの日、不具合が修正されたから学校を再開する、というメールが届いた。翌日から何もなかったかのように学校が始まった。校舎は前の校舎とほとんど同じだったが、一部異なるところもあり、間違い探しをするのが学校での一番の楽しみとなった。

 テロがあったとされる学校は、遺体がすべて運び出され、葬式をしたと聞いている。

 居雀は学校が再開しても来る様子はなくなり、virtual schoolでの不登校となった。もともと普通の学校で不登校になるような奴が多いから、途中で不登校になる奴もときどきいる。一週間もたてば、居雀がいないことを気にする人間はいなくなった。

 烏丸は以前のような無口に戻ったが、それでも俺や鴎野とは普通に話すようになった。勇者モードになるのはウイルスのときだけのようで、「クロウザ」と呼ぶと、

「本当の姿はお前たちにしか見せていない。普段の学校で呼ぶのはやめろ。」

 と言って少し怒る。それも含めて、仲のよい友となった。


 相変わらず俺は学校に来ては腕立て伏せをしている。いつも通りの日常が帰ってきて少しホッとしていると同時に、退屈だと感じることも多い。


「なあ、正人。もうウイルス出てこねぇのかな。」


 鴎野はあれ以来、俺のことは名前で呼ぶようになった。だから、俺も名前で呼ぶことにした。


「おい良介。もうすぐ期末試験だぞ。ちゃんと勉強してるか?」

「いいよな正人は成績優秀で。世間のことは全く知らないくせにな。俺もバカじゃないけど、結構な時間勉強して真ん中付近なんだから...って俺の質問に答えてくれよ。ウイルスもう出てこないのかって話!」

「しばらくしたら出てくるんじゃないかな。俺の予想だと、また学校が襲われる。現実世界と同レベルに広いバーチャルで、ピンポイントでデルタ高校を狙ってきたんだ。デルタ高校が移転したとはいえ、また場所を特定されて攻撃してくると思うよ。」

「なるほどなぁ。」

「なぜデルタ高校を狙うのかは分からないけどね。みんなやられてもログアウトするだけだし。それに...」

「ちょっと正人も鴎野もその話やめなさいよ!まわりにバレたらどうすんの!」

「ちょっ、愛花...声がデカいって。そういうのがバレる原因になるんでしょうが。」

「は?その話をする方が悪いんでしょ!」


 まわりがこっちを見る。


「わかったわかった、俺が悪かったって。な、もう少し落ち着いてくれよ。」


 愛花はイライラしながら向こうに行ってしまった。


「なあ正人。アイツお前のこと好きなんじゃないの?」


 何を言ってる良介。そんなわけないだろ。


「前々からお前ら見てて思ってたんだけどさ、鴨島って他の男子とはほとんど関わらないくせに正人にだけよく話しかけてただろ?」

「そりゃあアイツは俺の情報源だし。」

「正人はそういう認識だったかもしれないけど、まわりからみたらイチャついてるように見えたぞ。鴨島の方はやたらと楽しそうだったし。最近はお前が俺や烏丸とばかり話してるから、お前と話ができなくてイライラしてるんじゃないか?」


 まさかそんな。アイツが俺のことを好きなのか?マジか?


「良介はよくそんなこと気づいたな。」

「そりゃあまあ俺だって...」

「え?今なんて?」

「なんでもねーよバーカ。ほら、午後の授業始まるぞ。」




「じゃあ、来週から期末試験だから、この土日はきちんと勉強するように。いいね?」


 来週から試験か。テストは好きではない。基本的に俺は勉強はしない。別にしなくたって点数はとれる。英語は知らん。ただ、テスト付近は皆がテストのことしか考えないから、退屈になりがちなのが嫌なだけだ。


 ログアウトしよう。



 --------------------------------------------


「ただいまー。」

「おかえり、正人。」


 母さんはあれ以来いつも通りだ。俺がちゃんと約束を守れば、何も起きない。それは分かっている。だがなんとなく、約束を破りたいと思ってしまう自分がいる。そう思うたび、あの頃の母さんを思い出して恐怖に震える。


 いつも通り晩飯を食べ、風呂に入り、寝る支度をする。明日明後日は何をしようか。土日が一番退屈だ。何もすることはない。どうせなら、ウイルスでも来てくれれば楽しめる気がする。

 母さんは土日も出かける。仕事が毎日あるようだ。長時間は働かないから、別に大変でもなさそうだし、深入りするつもりもない。

 おやすみを言って眠りにつく。明日は前の学校にログインしてみようか。ログイン先は特別に教えてもらった。



 ピピッ


 ん?

 メールか。

 今何時だ?

 5時30分か。まだ母さんも起きていないだろうし、見てみることにする。ポッドに入り、メールを確認する。


『 VBVSの皆さん


 新たなウイルス、No.3が現れました。今回はウイルス出現後すぐにデータの凍結を行ったため、現実世界での被害はありません。ですから、慌てずいつも通りの時刻にアクセスしていただいて結構です。今回は被害0を目標に討伐を頑張ってください。


 アクセス先は、C7BI02AH8です。


 内閣総理大臣 黄金厚彦  』


 ついに来たか、という感覚だった。学校ではなかったが。俺は再び布団に入り、母さんが起こすのを待つことにした。



「正人、起きなさい、朝だ...」

「おはよう、母さん。今御飯食べるね!」

「あら今日は元気がいいね。」

「あ、今日は土曜日だけど学校あるから!」

「あら、そうなんだ。」


 いつものように朝飯を食べ、支度をした。が、かかった時間はいつもよりもずっと短かった。


「いってきまーす!」


 ポッドの中に入り、メールで示された場所を指定する。


 よし、アクセス!!



 ----------------------------------------------


「おっはよーございまーす!鶴川正人、ログインしましたー!セーフ?アウト?」

「セーフだ。5分もな。なぜ土曜日はちゃんと間に合うんだ。」

「えへへ。なんとなく。」


 目の前には5mほどのクマのようなウイルスがいる。前の2体のウイルスよりかは小さい。


「あれ、居雀はともかく、烏丸が来てないな。アイツもギリギリにログインするとか?それともヒーローは遅れてやってくるとか?」

「いや、実はそうではないみたいなのだ...」

「どうしたシッチョー、そんな暗い顔して。」

「あれを見てくれ....」


 ウイルスが襲いかかろうとしている家にあったのは、「烏丸」と書かれた表札だった。


「No.3およびこの家を含む三軒は、データを凍結しているそうだ...」

「つまり、烏丸くんの家はデータを凍結されて、おそらく烏丸くんは家どころかベッドすら出られない可能性があるらしいです...」


 ウイルス倒せる奴、いなくね?期末試験よりよっぽどヤバイ試験だな、こりゃ。



お読みいただきありがとうございます!


次回予告

第十話 戦力

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