第八話 作戦
VBVS最初の活動...!
「さて、このNo.1を倒す方法だが、鶴川が昨日ある作戦をたててくれた。」
---昨日、No.2討伐後---
「鶴川、提案というのは何だ?」
「先生、質問なんですけど、この世界ってデータなんですよね?しかも、簡単に凍結できるってことは管理してる人もいるんじゃないですか?」
「ああそうだ。」
「では、その人たちにデータの書き換えとか頼めますか?」
「それは簡単にできることではない。現実世界にも突然影響が出てしまうからな。」
「それってここのグラウンドもですか?」
「グラウンド?ここのグラウンドは現実世界とは関係ないぞ。建物はデータの実体化だがグラウンドの砂ぐらいは本物を使っているはずだ。」
予想通りだ。それなら作戦をたてられる。
「先生、ここのグラウンドに落とし穴を作りましょう!超巨大な。そうですね...あの化け物がすっぽり入るぐらいのね。」
---現在---
「えっ、じゃあここには巨大な落とし穴があるってこと?」
「その通りだ、鴨島。昨日私がデータの管理者に頼んで、このグラウンドに落とし穴を作ってもらうよう頼んだ。そして、今日、校舎のデータ凍結を解除する。」
「ちょっと待ってください。」
「どうした?二鷹。」
「あのでかいの、羽がありますよ!空を飛べるんじゃないですか?」
「まあやってみてから考えようぜ。」
「鶴川くん!あなたが考えた作戦なんでしょ!ちゃんと責任持ってよ!下手したら全滅するかもしれないんだよ!」
「まあまあ落ち着けって。大丈夫だよ、やってみりゃ分かる。」
おそらくアイツは...落ちる!
「凍結解除の申請をした。1分後に動き出すぞ。」
「じゃあみんな、作戦通りにいくぞ!」
「おー!」
「烏丸、準備は出来てるか?」
「クロウザだ。任せろ。」
10秒前、9、8、7、6、5...
来る!
ウオオオオォォォォ
No.1は大声を出し、校舎に殴りかかる。
よし、今だ!
全員一斉に石を投げる。
「おーい、こっちだこっちー!」
「バーカ、バーカ!」
「ほらほらこっち殴ってみろって!」
「お前のかぁーちゃんでーべそ!」
グオオオオォォォォ
うなり声をあげる。こっちに注意が向いたようだ。
「よし!今だ逃げろ!」
一斉に全力で逃げる。
バサッ、バサッ
No.1は羽を広げ、俺たちのほうに向かってくる。やっぱり飛べたのか。
「ほら!やっぱり飛べるじゃん!」
「大丈夫だ。想定内だよ。」
「は?あんた何言ってんの?このままじゃみんなやられるって!」
「なんで愛花はケンカ腰なんだよ。どうせやられてもログアウトするだけで死にはしないんだから。なぁ、鴎野。」
「よっしゃ!任せろ!」
---昨日の作戦会議中---
「なあ鶴川、落とし穴っていっても、アイツ羽が生えてるぞ。」
「そんな作戦をたてずとも、我が真っ二つにすればよかろう。」
「いや、それはダメだクロウザ。クロウザの攻撃は威力が高すぎて、周りを破壊しかねない。ハンマーで叩くのはいいが、あの斬撃は校舎の方へ向かって撃つと更に校舎を破壊してしまう。できるだけ下に向けて攻撃してほしい。今回はたまたま被害がなかったようだが、データを破壊する敵を倒すのに自分がデータを破壊していては、元も子もないからな。
それと鴎野、多分No.1は空を飛べたとしても落とし穴にはまると思うぞ。おそらく、No.1は物理攻撃しかできない。わざわざ殴って破壊しにきているのがその証拠だ。」
「ほんとかよ...」
「まあ他に攻撃方法があったなら、クロウザが上空に向かって斬撃を放ってくれればいい。その場合、ヘリとか飛行機に気を付けるように。」
「お安いご用だ。」
「それと、鴎野に頼みたいことがある。もしNo.1が物理攻撃しか使えなかったら...」
---現在---
(もしNo.1が物理攻撃しか使えなかったら...)
「俺が囮になる!!」
No.1は急降下し、地面に突っ込んで殴りかかる。
ズドオオオォォォン
No.1はそのまま10m下へと突っ込んでいった。
「よし、ハマった!今だクロウザ!」
「世界を滅する悪しきウイルスよ!今ここで消滅せよ!
出でよ、正義の鉄槌、グランド·バース!
地 · 滅 · 破 ! 」
No.1は烏丸の攻撃を受け、消滅した。
「よくやったな、鶴川、烏丸。」
「クロウザだ。」
「先生、なんとか作戦成功ですね。あと、次会ったら鴎野にもお礼言わないとな。」
他の3人は唖然としているが、少しして集まってきた。
愛花が口を開く。
「ねぇ、正人!鴎野くんになんてことさせるの!確かにウイルスは倒せたけど...こういうやり方ってどうかと思うよ?」
「はぁ?倒せりゃいいんだよ倒せりゃ。昨日お前なんか何もせずにやられたじゃねーか。そういう無駄な犠牲が一番ダメなんだよ。昨日はシッチョーのあの一発があったからこそ勝てたんだ。やられるなら何かしらの貢献をしないとな。」
「だからって最初からそういうやり方は...」
「そこまでだ。ケンカはやめろ二人とも。それに、鴨島。確かに鶴川は鴎野に囮を頼んだが、むしろ俺にやらせてくれ、と言っていた。」
---鴎野宅---
「ひいい、やられちまった。でも、烏丸がなんとかしてくれるだろ。」
(俺も、VBVSの一員として貢献できたかなぁ。昨日は結局、俺は自分から何も出来なかった。だからこそ、囮を引き受けたんだ。)
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「どうやら、鴎野は自分から行動に移せず、敵を倒すことに貢献していないことを悔やんでいたようだ。」
「そんな、私だってまだ何も出来てないのに...」
「私も...」
「おいおい反省会じゃねーぞ。誰かを犠牲にしてでも勝つことが大事なことだ。この戦いでは俺たちが死ぬわけじゃないっていうのがポイントだ。だから、最後の一人になっても、その最後の一人が、敵を倒せればそれでいい。そう考えなきゃ絶対に勝てない。」
「それも、作戦のひとつってことだよね。」
「そうだ。分かってくれたか?」
「うん。」
よかった。確かに誰かを犠牲にするのは心が痛む。だが、それが敵を倒す突破口になることがあるということを、昨日よく理解した。
「さあ、今日のVBVSの活動は終了だ。明日から、普通に学校を再開する。」
「え?」
「どういうこと?」
皆がざわつく。
この校舎のデータを修復してもとに戻すのだろうか。
「この校舎はもう使えないだろう。現実世界で、壊れた建物が急にもとに戻ったら大騒ぎになるからな。そのため、ここにそっくりな別の校舎を用意した。今後デルタ高校にアクセスすると、その場所にログインするように変更する。」
なるほど。他に学校などいくらでもあるからな。しかし、またそこが襲われることはないのだろうか。ウイルスは、ピンポイントでデルタ高校を狙ってきた。それを思うと、その場所も攻撃を受ける可能性が高い。
「それと、このことは一切口にするなよ。現実世界の真実も、VBVSのこともな。」
言うのが遅い気もするが、そんな簡単に口に出来ることではないだろう。皆の反応を見るに、まだ誰もしゃべっていなさそうだ。
「とにかく、もう切り替えて明日からの学校を楽しめ!じゃあみんな、さようなら。」
「さようならー。」
「さようなら。」
俺もログアウトするか。じゃあなババア。さようなら。
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次回予告
第九話 試験
再び平和な学校生活が始まる...?




