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第三話 真実

化け物の正体は...?

 

「正人、起きなさい!遅刻するよ!」


 いつもの母さんの声だ。今何時だろう。えーっと...


「8時27分!?嘘だろ!?」

「だから遅刻するって言ってるのに!」

「朝飯は?」

「いつも通り」


 慌ててリビングに行き、食パンを詰め込む。いつもと同じ、冷めてて固い食パン。


「マジで遅刻するから歯磨きなしでいい!」


 そう言い残してポッドに駆け込む。今日は「いってきます」と言えなかった。

 アクセス先は、デルタ高校グラウンド。いつもとは違う。あの化け物のことを説明してもらうために。


 アクセス!!



 -------------------------------------------


「おっはよーございまーす!!鶴川正人、ログインしましたー!セーフ?アウト?」

「アウトだ鶴川。34秒な。」

「じゃあ腕立て34回ですね!始めまーす!」


 おかしい、誰も笑わない。というか、人少なくね?俺含めて7人か。みんな遅刻しすぎだろ。


「鶴川、腕立てはしなくていい。今は時間がない。早く座れ。」


 ババアまで何を言ってるんだ。これは日課だろ?と思いながら振り返る。


 !!!!!


「こ、こいつ...昨日の...ば、化け物...」

「早く座れ。」


 間違いない。昨日の化け物が右腕を振り上げ、今にも校舎を破壊しようとしている。が、完全に停止している。校舎は2回攻撃されたのだろうか、2つの大きな殴られた跡が残っている。

 俺は後ずさりをしてそのまましりもちをついてしまった。


 昨日はドラゴンのように見えたが、頭と羽はドラゴンのようで、体は筋肉隆々の人間のようだ。小学校のとき、友達がやってたゲームのリザードマンとかいうやつみたいだ。それに、やっぱりデカい。10mほどある校舎と同じくらいの高さだ。


「これで全員揃いましたね、校長先生。」

「ええ。みなさん、昨日あんなことがあったにも関わらず、よく来てくれましたね。」


 校長先生だ。2回ほど見たことある。むしろこのデルタ高校に通い始めて1年以上たつのに、2回しか見ないのは少なすぎる。


 室長である湿鳥興一が口を開く。名字も「しつちょう」と読めることから、まわりからは「シッチョー」と呼ばれている。


「校長先生!何ですかあの化け物は!何で止まってるんですか!それに兵庫のテロ事件。あれどう見てもデルタ高校の校舎じゃないですか!破壊された箇所も全く同じですよね!?」

「えっ?」

「どうした鶴川」

「テロ事件って何?」

「はぁ?お前それ本気で言ってんのか?相変わらずニュース全然見ないなお前は、昨日テレビはそれしかやってなかっただろ。」

「あー昨日はずっと寝てたから...で、テロ事件って...」

「昨日兵庫の高校でテロがあったんだよ。爆発が2回。100人近くが亡くなって、800人以上が怪我してるんだぞ!で、その校舎がデルタ高校の校舎そっくりなんだよ。しかも、来てみれば破壊されてる場所まで同じだ。」


 は?え?それってどういう意味だよ。現実世界の校舎とここの校舎が同じだとでもいいたいのか?


「とにかく校長先生!説明してください!」

「君たちはきちんと日本史の授業を受けていますか?」

「えっ?」


 校長の話が唐突すぎる。化け物を説明しろと言ってるんだ。


「話をそらさないでください!僕たちはあのばけも...」

「黙りなさい!日本史の授業を受けているかと聞いているのです!」


 校長が声を荒らげた。だがその声は妙な説得力があるような気がした。全く論理的ではないのだが。


「に、日本史の授業は受けてますが...」

「その歴史を君たちは信じていますか。」


 へ?何を言ってるんだこの人は?やっぱり説得力なんてなかった。


「校長先生、ここからは私が話します。」


 そう言って出てきたのは日本史の教科担任の加橙先生だ。若くてキリッとしていて憧れる。


「第三次世界大戦で日本はどうなった?二鷹、答えてみろ。」

「えっ、あっ、はい。日本は負けて、一部の建物はなくなりました。ですが、その後外国の協力もあり、少しずつ復興して、今に至ります。」

「そう、教科書通りなら、な。」

「えっ、でも先生は授業でそうやって言っていたじゃないですか。」

「ああそうだ。だがそれは真実ではない。」

「え?」


 皆がざわつき始める。

 そんな中、声をあげたのは、鴎野良介だった。


「もしかして勝ってた?」

「違う。日本は大敗した。だが、それは君たちが思っているよりずっと大敗だったのだ。」

「どういうことですか?」

「多くの、というレベルではない。全国各地が焼け野原だ。ほとんど跡形もなく。重要な文化財などもお構い無しにな。もう二度と復活できないほどに。」


 皆は絶句した。言ってる意味がわからなかった。


「それに、外国の協力など一切ない。敗戦国に対して情けなんてなかった。」


 愛花がおそるおそる声を出す。


「文化財もなくなったって...金閣寺とか、ありますよね?法隆寺とかも...」

「残っていない。すべて灰になった。」

「そんな...じゃあ私が小学校の修学旅行で見たのは一体なんだったの...?」


 俺は全く声も出せなかった。今でこそ外に出ないが、昔外に出ていたころは高層ビルが立ち並ぶような場所に行ったこともある。


「じゃあどうやって今のように復興させたんですか...?」


 愛花がもう一度声を振り絞った。


「復興してなどいない。何もない焼け野原のままだ。」


 ほんとに意味がわからない。何がどうなって今に至るんだ...


「ここからは私が説明しますよ。」


 校長がもう一度前に出る。


「ここからが歴史の真実です。第三次世界大戦後、日本は焼け野原になりました。しかし、人間と一部の動物、植物たちは地下に避難していたため、死亡者は地上が壊滅的な被害を受けたわりに多くはなかったのです。

 当時、最先端の研究をしていた人がいてね。その人はデータを実体化する研究をしていたんです。」

「それってバーチャルのことですか?」

「少し違います。彼の研究はバーチャルのデータを現実世界に実体化する研究でした。」


「まさか、じゃあ俺たちの現実世界にあるものって...」


 俺は思わず声を出してしまった。


「その通り。データを実体化したもの。現実には存在しないものです。」


 もうついていけない。ぶっ飛びすぎている。


「研究者はその研究を完成させました。そして、それが復興に使えないかと考えました。日本中の画像、絵などをかき集めました。人々の記憶も貴重なデータとなりました。そうして出来上がったのが、今の現実世界なのです。ですから、建物などはほぼすべてデータで、実際は何もない場所なのです。」


 校長は続けた。


「この世界はバーチャルということになってます。しかし、本当は少し違います。あなたたちが今アクセスしているこの場所、これは、実は現実世界のデータの内部です。コピーでもありません。現実世界に実体化されている建物などのデータそのものです。

 テロ事件の質問に答えましょう。あのテロは何かが爆発したわけではないです。兵庫の高校の校舎の元データであるこの場所が攻撃を受け、データが書き変わりました。したがって、現実世界の校舎も同様の被害を受けた、というわけです。まるで、バーチャルと現実がリンクしているかのように。」


 もはや誰も声を出せなかった。理解が全く追いつかない。


「目の前にいる化け物の正体をみなさん知りたがっていましたね。この化け物は、いわばデータを破壊する『ウイルス』です。ただし、恐ろしいことに、現実世界にも破壊をもたらします。そのような『ウイルス』に、あなた方は立ち向かっていただきます。」


 へ?

 今なんて?

 まさかこの化け物と戦えって言ってないよな?


「さあ、みなさん。本当の学校生活が幕を開けますよ。現実世界を破壊する『ウイルス』たちを倒す、『ウイルスバスター』としての、学校生活です。」

今回もお読みいただきありがとうございます。


舞台はおわかりいただけたでしょうか。

よろしければ感想等お気軽にどうぞ。


次回予告

第四話 役割

あの『ウイルス』を倒すって...?


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