第二話 現実
化け物にやられた正人は...?
「うわっ!」
慌ててゴーグルをはずすが、ちゃんとポッドの中にいる。自分の身にも何も起こっていない。
なんだったんだ今のは...悪夢から目が覚めたような感覚だ。
いや、いっそ本当に夢でも見てたのではないだろうか。あんなゲームの世界のようなことが起こるはずもない。virtual schoolは一つの教育システムだぞ。夢を見たんだ。そうだ、そうに違いない。変な夢を見て、慌ててログアウトしたんだ。
ポッドの時計を見る。13時ちょうど。あれ、また遅刻か。まあいいか。
パスワードを入力しアクセス先を指定。よし、アクセス!
ん?
なんだこの表示?
エラーコード280001?このアカウントは現在復旧中です?しばらくしてからお試しください?
初めて見たぞこんなの。やっぱり夢じゃなかったのか。アカウントブッ壊れたか?じゃあやっぱりさっきのは現実だったのか。いやバーチャルだけど。バーチャルの中で死んだとかか?
とにかく、学校に行けなければ、することはない。普通の人はテレビを見るだろう。家にテレビはない。テレビがないなんて言えないから学校ではごまかしている。ラジオもない。ポッドになぜそのような機能がついてないのだろうか。新聞も来ない。要は情報から隔離されてるってことだ。世間のニュースは学校で聞く。でも、外に出ないしあまり意味はないと思う。
娯楽もない。学校で漫画やゲームの話題が出ても乗れない。別にかまわない。そういうところで友達を作ろうとか思わない。人間性があれば友達くらいできる。
だから暇なときは、寝てるか学校に行く。学校はタルいが何もしないよりはよっぽどマシ。
もうログインできないから、寝よう。
「起きなさい、正人。」
ん?
母さんに起こされる、ってことはもう朝!?
「今何時だ?、また遅刻する!?」
「何バカなこと言ってんの。晩御飯の用意できたよ。早く食べなさい。」
「ほーい。」
混乱してしまった。動揺してるのかもしれない。
晩飯は、カレーか。カレー多いなぁ。3日に1回くらいカレーだ。
うん、いつもの味だ。うまいな。この時間が俺の唯一の楽しみだったりする。
「今日は学校でどんなことがあったの?」
「...」
「何黙ってんの、毎日ちゃんと報告するルールでしょ!」
今日あったことなんて言えるものか。母さんは昔から少しヒステリックなところがある。化け物が出たなんて言ったら、母さんは学校に文句を言いまくるだろう。いや、母さんじゃなくても文句言う人はいそうだな。
「いつも通り退屈に過ごしたよ。母さんと一緒に晩飯を食べるこの時間が一番幸せだな。」
「そんなこと言っても何も出ないよ。」
「わかってるって。」
それから俺は、午後の授業をでっち上げて母さんに話した。実際どんな授業になったか大体予測できる。母さんはいつも笑顔で俺の話を聞く。一度も面白い話なんてしたことはない。
後は風呂に入って寝るだけだ。どう考えても他の人間より早く寝てる。でもどれだけ早く寝ても遅刻する。なぜだろうか。逆になぜみんな起きられるのだろうか。
ピピッ
腕時計が鳴る。メールか。俺はメールを受信できるものを一つしか持ってない。ポッドだ。この腕時計は、ポッドにメールが届いたことを知らせてくれる。学校からのメールだ。見なくてもわかる。メールを送ってくるのは学校と母さんしかいないのだから。
とりあえず先に風呂に入ってしまおう。風呂も俺が好きな時間の一つだった。今は時々嫌な思い出がよみがえるから、カラスの行水だ。
歯磨きもしたし、寝る準備ができた。メールを確認しよう。
「おやすみー、母さん。」
「おやすみなさい。」
さて、ポッドのメールだが、やはり学校からだ。
『 鶴川正人様
本日は突然の不具合により、全員が強制ログアウトしてしまいました。申し訳ございません。
校舎の調子が悪いので、明日の8時30分までに、デルタ高校グラウンドにアクセスしてください。
ただし、強制ではありません。本日起こったことの説明をしたいと思っております。
よろしくお願いいたします。』
は?なんだこれは。
化け物についての説明を明日するだと?ふざけるな。このメールでしろよ全く。それに本当にアクセスできるのか?さっきはログインすらできなかったぞ。
まあいい。明日には復旧してるだろ。こんなメール送ってくるぐらいだし。もう寝よう。
今日は昼寝をしてしまったせいか、なかなか寝つけない。
深夜1時を過ぎた。ようやく寝れそうだ。
お読みいただきありがとうございます。
次回予告
第三話 真実
化け物の正体が明かされる...!?




