8章 ホラーゲーム実況
秀一はチェリーの元を訪ねた。
「いらっしゃい神主さん。」
「言われた通り、ホラーゲーム買って来たぞ。『サイレントハザード』」
「うれしいわ!ゾンビと戦うゲームね!」
「それと録音マイクとゲームをパソコンにつなぐキャプチャーボードも買って来たぞ。」
「ありがとう!さっそくゲームの実況を開始するわ!」
「ゲームの実況だって!?」
「ゲームの実況をニコチューブに投稿しようと思うの。ニコチューバーになろうと思って。」
「このお寺はインターネット環境が整っていないぞ。」
「だからここで実況してあなたにネットカフェで投稿してもらうの。」
「僕をあてにするな!」
秀一はチェリーを10連続往復ビンタした。
「やぁん!も~う、いいじゃないの。私はひきこもりでネットカフェにいけないし、あなたしかいないのよ。」
「もう、しょうがないなぁ。」
「じゃあ早速実況プレイしましょう!」
「僕もやるのか!?」
「私ひとりじゃ心細いんですもの…。」
「だったらホラーゲームになんかしなければ所かったのに。」
「ゲームのジャンンルの問題じゃないわ。私一人じゃなにもできないもの…。あなたが居ないと私だめなの……。」
「やれやれ。」
秀一はチェリーの頭をなでなでした。
「お前の髪の毛は本当にサラサラで触り心地が良いな。」
「でしょ!もっと言いなさい!」
「調子に乗るな!」
秀一はピコピコハンマーでチェリーを叩いた。
「ふふふ。じゃあ早速プレイしてちょうだい!」
「それも僕がやるのか!?」
「私も隣で一緒に実況するわ。私がしたいのは実況なの。」
「僕はゲーム音痴なのに?」
「そこが良いのよ。サクサクプレイしたら実況が盛り上がらないでしょう?適度に下手な人の方が実況に向くのよ。」
「そういうもんかなぁ…。」
「そうよ!絶対そうよ!」
そんなこんなでチェリーと秀一はゲーム実況を開始した。
「ハロ―、ニコチューブ!」
「いきなりどうした!?」
「視聴者の皆さんに挨拶してるのよ。ほら、あなたも挨拶しなさい!」
「こんにちは…。」
「どーも、チェリキンと秀坊です!」
「ちょっと待て!なんだそのチェリキンと秀坊って言うのは。」
「私たちのハンドルネームよ。本名で実況するわけないでしょう。」
「ハンドルネームが必要なのか?」
「『うp主』じゃややこしいでしょう?ゲーム実況する人は普通ハンドルネームを持ってるらしいわよ。あなたが秀坊で私がチェリキン。」
「なんで僕は秀坊なんだ?」
「あなたの名前を捩ったのよ。ちなみにチェリキンは私の名前と有名ニコチューバーのハンドルネームを捩ったものよ。さぁ、早くゲームを進めましょう。」
「今の辺のくだりはカットかな。」
「そうね。そのままでもおもしろいと思うけれど。」
挨拶を終えると秀一はゲームのプレイを開始した。
「ホラーゲームの実況なんて面白いかなぁ?ただ怖がるだけで良いんだろう?」
「意外と難しいのよ。」
「こんなな感じだろ…?」
秀一は怖がる演技でプレイした。
「うぅう…。嫌だよ。ここ絶対なんか出るよ~。ここ!ここ!ここ絶対なんかいるって!怖いよ~。出る出る出る!うぁああ!!!」
犬のゾンビが出現した。秀一はメニュー画面を開いて、一息ついてから、ゾンビ犬をハンドガンで倒した。
「こんなののどこが面白いんだ?」
「視聴者はもっと素のリアクションが見たいのよ。普通にやってちょうだい。」
「普通にも何も僕はホラーゲームなんて怖くないからなぁ。」
(そもそも僕妖怪だし…。悪霊や死霊とも実際に戦っているし。)
「陽気ねえあなたは。」
(妖気なんだよ僕は。)
秀一はゲームを進めた。
「ずっと不思議なんだが、何でハンドガンの弾や栄養ドリンクがこんなに落ちているんだろうな。」
「そういう仕様なのよ。」
「栄養ドリンクでダメージを回復できるのもおかしいよな。」
「ゲームですから。」
「うわあああああ!!!」
秀一は突然天井から落ちてきたゾンビにびっくりした。秀一は慌ててメニュー画面を開いた。
「それよ!視聴者が求めてるものは!怖くないとか言っておいて本当はビビってるんじゃない!」
「ちげーよ!違う!違う!今のは怖いんじゃなくてびっくりしたんだ。驚いただけだよ。いきなり敵が天井が降ってきたら普通びっくりするだろう。」
「それをビビってるっていうのよ。」
「怖がるのとびっくりするのは別の感情だろう。ドッキリ系トラップとかずるいよ。こんなのびっくりするに決まっている。怖がらせるんじゃなくびっくりさせるのはやめて欲しいぜ。」
「ホラーゲームってそういうものよ。どっきり要素も含めてホラーなの。心臓に悪いゲームなの。」
秀一はさらにゲームを進めた。
「おわああああ!!!!」
「きゃああああああ!!」
両脇の窓から犬のゾンビが複数匹飛び出してきて秀一とチェリーは驚いた。秀一はまたメニュー画面を開いた。
「………ね?結構怖いでしょう?」
「またドッキリ系だよー!!敵がいないマップだと油断している所に突然現れるからびっくりするんだよ!!!」
「だからって敵が出るたびにメニュー画面開くのはやめましょう?ビビりすぎよ。」
「メニュー画面が開いている間はゲーム内の時間が止まっているようなものだからな。ダメージも受けないし、一息ついて落ち着くのにちょうどいい。」
「ヘタレだわ~。」
「ヘタレとは違うだろう。正攻法だよ。態勢を整えてから敵に挑むのは正攻法だ。」
「そうかしら?」
「それにしても犬のゾンビは苦手だ。動きが速いんだよ。なんでこんなに速いんだ。」
「その代わり攻撃力は弱いけれどね。」
「ドッキリ系とゾンビ犬は勘弁して欲しい。」
「やっぱり怖がってるじゃない。」
「怖がるのとは違う!」
秀一はさらにゲームを進める。中ボスと遭遇した。
「まーた、メニュー画面を開いてる~。」
「違う違う~!ただ体力と弾の残量を確認しただけだ。装備を万全にするのはゲームの基本だ。」
そう言うと秀一はUターンしマップ移動した。
「逃げる気?」
「厄介なのは後回しにして先に探索を続ける。ってうわああああ!!!」
中ボスキャラもマップ移動してきて追いかけてきた。またメニュー画面を開く。
「さっき開いたばかりなのにまた開くなんてやっぱりビビってるのね。」
「うわああああああああ!!!違う違う違う!!!!なんで敵までマップ移動して追ってくるんだよ!雑魚敵はマップ移動すると追ってこなかったのに!」
「そういう仕様よ。」
「ていうか、雑魚敵はなぜ同じマップから移動しないんだろうな…?通り過ぎるときはあんなに襲ってくるのに。」
「そういう仕様よ。敵が全部追ってきたら、一々全部倒さなきゃいけないでしょう?それじゃあ弾がいくつあっても足りないわ。適度に敵をスルーできるように普通の敵キャラはマップに固定されてるのよ。」
「つまり、この中ボスキャラはスルーできないように追ってくるという事か。」
「そういう事ね。」
秀一はしぶしぶ中ボスとバトルを開始した。
「お、これは?!」
「パターン入りました。」
「嵌め技ができるのか。」
「バグっぽくてズルいけれどね。」
「ズルじゃなくて正攻法だよ正攻法。」
秀一は中ボスキャラをなんとか倒した。
「今日はこれぐらいにしておこうか。」
「消極的ねえ。怖がり過ぎて疲れたの?」
「そうじゃない。キリが良いからだ。」
「じゃあ今回はこの辺で切りたいと思います~。ご視聴ありがとうございました。」
「ご視聴ありがとうございました。」
「ふうようやく取り終えたわねえ。」
「8時間以上もやり込んだからな。」
「カットシーンを考慮しても、20~30分づつアップロードしていけば16パート分くらいにはなるわね。」
「そうだな。」
「じゃあ早速編集してちょうだい!」
「ええ!?それも僕がやるのか!?」
「だって、私動画の編集なんてやったことないもの。やり方が分からないわ。」
「僕だって動画編集なんてできないよ!」
「えええ!?あなたがやってくれるものだとばかり……。」
「他力本願すぎるだろ!」
秀一は1000tハンマーでチェリーの顔面を叩いた。
「いた~い!!!どこから出したのよそんなのぉ…。」
「野暮なこと聞くなよ。野暮な質問する暇があったら、少しは自分で努力しろ。」
「は~い。」
チェリー、猛省ッ…!!