7章 暴力ヒロイン
秀一はジェシーの元を訪ねた。
「アニメのDVD借りてきたぞ!」
「お帰りなさいませ、神主さん!」
「『インフェルニティ・ストライク』のDVDか~流行っているのか?」
「ええ!原作はつまらないらしいんですけれども、アニメは凄く面白いです。」
「さっき聞いた。」
「つまらない原作をこんなにも面白くしたアニメスタッフの力は凄いと思います。特にキャラデザは神がかってて、このアニメ効果でつまらない原作も爆発的に売れたんです!」
「それもさっき聞いた。」
「メカ・美女・ハーレムというオタ受け要素間違いなしの大ヒット作です。」
「へえ。」
「またコスプレしてみたいのですけどいいでしょうか?」
「良いよ。」
ジェシーは着替えてきた。髪を下し、頭に紫色のヘアバンドをはめている。
「それがコスプレなのか?」
「『インフェルニティ・ストライク』に赤い髪の娘がいるんですけれど、それのコスプレです。」
「随分ラフな格好だが…。」
「それがそのキャラのコスチュームなんです。」
「中々可愛いじゃないか。相変わらず素敵な髪だ。」
「えへへ。」
ジェシーは秀一に腕組みした。秀一の腕にジェシーの胸が当たった。
「引っ付くな!」
秀一はジェシーの顔を10連続往復ビンタした。
「ありがとうございます!」
「喜ぶな!」
「私たちの業界ではご褒美です。このアニメでもヒロインが全員暴力女なんです。」
「いわゆる暴力ヒロインか。」
「そうです。全員暴力ヒロインです。」
「女キャラが理不尽に暴力を振るうだけなのの何処が面白いんだ?」
「ツンデレ的な要素だと思います。」
「ツンデレのツンを暴力とはき違えているだけじゃないか?ツンケンと暴力はイコールじゃない。非暴力的なツンデレも大勢いる。」
「そうですけど…。」
「ツンデレを暴力でしか表現できないのはその作家の表現力が乏しいからなんじゃないか?」
「暴力ヒロインにする事で個性を出すことができます。」
「暴力ヒロインがこうも乱造されていてはかえって没個性なんじゃないか?有象無象の暴力ヒロインの何が面白いんだ?暴力を振るう事しか個性のないヒロインのどこに魅力があるんだ?」
「それはその……。『カワイイは正義』ですから。」
「それって思考停止だろ!」
秀一はジェシーを電撃で痺れさせた。
「ありがとうございます!」
「第一、理不尽な暴力を振るうヒロインなんて可愛くもないだろ。」
「外見が可愛いので…。」
「個性を出すのは中身だろう?さっき行っていた個性を出す為というのと矛盾しているぞ!」
「うぅ…。」
「女が男に暴力を振るうだけでギャグになると思ったら大間違いだ。」
「その逆ってあまりないですよね。」
「男が女キャラに暴力を振るうギャグって受けがよくないのかなぁ。」
「ネット小説ならありそうですけれど、そういう小説をネットで公開しても伸びないでしょうね。」
「全くだ。」
秀一とジェシーは耳の痛くなるような話を続けた。