6章 書籍化
秀一はロザの元を訪ねた。
「また新しい小説を買って来たぞ。」
「いらっしゃい!神主さん!」
「『超加護バトルワールド』だ。」
「まぁ!ありがとう!」
「かなりの話題作のようだな。」
「『インフェルニティ・ストライク』の作者、ズルイ先生の最新作よ!」
「ほう。『インフェルニティ・ストライク』ってそんなに面白いのか?」
「そうでもないの。ただイラストが良いから売れただけ。挿絵とアニメのキャラデザが良いから売れただけね。」
「アニメ化しているのか。」
「アニメのキャラデザが良いからアニメ効果でつまらない原作が爆発的に売れたのよ。アニメは凄く面白かったらしいけど…原作はそうでも…。」
「……。『超加護バトルワールド』は面白いのか?」
「話題作だから買ってみたけれど、期待はできないわね…。とりあえず読んでみるわ…。」
~数十分後~
「………どうだ?」
「………。」
「やっぱりイマイチって顔だな。」
「いちいちパロディを挟んでいて、『パロディをする→元ネタの解説』の繰り返しばかりで全然面白くないわ。」
「そうなのか?」
「パロディは元ネタが分かる人がクスリとくるのが良いのよ。わざわざ何のネタか説明するなんて、芸人がネタをやった後にネタの解説するようなものよ。『インフェルニティ・ストライク』もそうだったけどヒロインの理不尽な暴力も目に余るし…。」
「他人の事を偉そうに言っているが、自分で書いてみたらどうなんだ?」
「面白い物を書けるかと、面白いかつまらないかを判断するのは別の話よ。」
「それはそうだが、1冊も書けないお前よりはズルイ先生の方が立派だと思うな。」
「……私も1冊分書いてみたのよ…ハーレム物。」
「本当か?どれどれみせてくれ。大凄いじゃないかこんな量を書けるなんて成長したな!」
~十数分後~
「……。」
「ね?面白いでしょう?」
「お前もパロディばっかじゃないか!」
秀一はロザの顔を10連続往復ビンタした。
「いやあん!パロディはネタを考えるのが楽なのよ。元々面白い物をネタにしてるから笑いどころが豊富なの。」
「こうパロディを連発されちゃ寒いだけだ。途中まで読んだが最後まで読む気がしない。」
「最後まで読んで!絶対面白いから!最後まで読んでから判断して!」
「『最後まで読んで』じゃない。最後まで読みたいと思わせるんだ。お前はそれができていない。」
「でも最後まで読めば絶対面白いと思うわ!」
「最後まで読みたいと思わせる文じゃなければいくら結末が面白くても意味が無い。途中経過も大事なんだ。むしろ途中経過の方が大事かも。」
「文才が無いのは自覚しているわ…。文章能力が無くても面白いストーリーは書けるとおもうのだけれど…。」
「文章能力が無さすぎるにもほどがあるだろう。なぜ台詞の前に人物名を付けているんだ。これじゃあ小説じゃなく脚本だ。」
「だれが喋っているか分かりやすくするために付けたの、4人以上の会話だと誰が何をしゃべりにくくなっているからつい…。」
「こんな小説の体を成していないものと比べたら『超加護バトルワールド』の方が立派だ。」
「そうね。私と比べたらズルイ先生は立派ね…。でもそれとこれが面白いかどうかわ別だわ。」
「お前の書いているものはネット小説レベルが限界で出版社に持っていったら絶対にボツにされるようなものばかりだろ。」
「いいわ。どうせ私は文章作るの下手なのよ。」
「開き直るな!」
秀一はロザの顔を引っ掻き回した。
「いたぁ…!」
「書籍化できるだけで十分凄いよ。書籍化すらできない作家が何人いることか。」
「そうね。私たちの事を小説にしても書籍化は無理でしょうね。」
「ヒロインが全員ひきこもりで赤髪ロングとか一発でボツだろうなー。」
秀一とロザは作家の大変さを語り合った。