1章 時代劇
秀一はロザの元を訪ねた。
「いらっしゃい!神主さん!」
「また新しい小説を買って来たぞ。」
「あらん!ありがとう~!私も小説を書いてみたのだけれど、読んでくれるかかしら。」
「また原稿用紙1枚に満たないんじゃなないだろうな。」
「大丈夫よ。原稿用紙数枚の短編を書いてみたの。」
「どれどれ。………って、水戸黄門じゃないか!」
「そう、水戸黄門のパロディを書いてみたの!水戸黄門のグルメ小説よ!」
「グルメ小説…ってただ食べるだけの飯漫画とかと一緒の…。」
「そうよ!」
「水戸黄門は江戸時代の話なんだが…明らかに近代の物や洋食が混ざっているのはどうなんだ?しかもビールまであるし。」
「その編はギャグだからテキトーなのよ。江戸時代の実際の食事なんて読者は知らないでしょうし、江戸時代の時代考証に合わせた食事を食べてもグルメリポートとして面白くないでしょう?江戸時代の純和食しかない小説なんて絵的に地味になるわ。」
「たんに時代考証を調べるのが面倒だっただけだろう。」
「それもあるわね…。」
「図星かよ!」
秀一はロザの顔に水晶玉を投げつけた。
「いた~い!」
「ん?お代を払う場面で印籠を見せているが……。この黄門様、印籠の権力でお代をタダにしてもらっているぞ!」
「印籠を見せてお代を踏み倒すのがこのグルメ小説の定番なのよ!」
「こんな黄門様いるか~!!!!」
秀一はロザの顔を10連続往復ビンタした。
「も~う。そこが面白いんじゃない。」
「もうええわ!」
秀一は呆れて帰って行った。