世界観などの補足説明 by 牡丹座の人
どうも、本作品【宗狂のクインテット】の作者 牡丹座の人 でございます。
本作品を三話現在までご拝読いただき、まことに嬉しい限りです(*'▽')
今作のモチーフはズバリ言って宗教問題と国家間における対立です。
今日に至るまで、この世界では多種多様な民族や部族、国家が様々な宗教を生み出し、育て、広げ、時にはそれらが原因で争い、対立し、多くの命を失うことに繋げました。宗教には当然人を惹きつける魅力もあり、それは様々な時代の人々の心の支えになったりなど多くの光の面もあったと思います。しかし、こういった宗教には共通して、光があるのと同様に闇を含んだ一面も我々に見せることがあります。その例としては現在でも続いている地域紛争などの様子や成り行きを見れば十分でしょう。
この物語の題名として扱っている【宗狂】という架空の言葉もまた、そんな信仰の中にある闇の一面をより強調して表現したものです。多くの信仰が差別などの身分さを色濃くしていった一方、強大な宗徒の集団においての圧倒的結束力、またそれらが国家と組み合わさることによる急速な成長と過激化など、宗教が世界に与えていく影響とそこに生じる戦いの姿を描きたく、本作品を書くことを決めました。
そこで、本作品中に登場する大きな四つの宗教の特徴をまずは紹介しようと思います。
カリルデシュー教(略称CD)
― 神の元での繁栄と安寧獲得を説く宗狂 -
多神教が根底にあるものの、CDの名で行われる政策や軍事行動は全て最高神カリルデシューの許しと命令を受けて行われるものとされていて、カリルデシューは最高神であり絶対神であるという見方も強い。あえてカリルデシューに服属する神などをも同時に信仰することで自然と絶対的な階級社会を埋め込んでいくという仕様となっている。
聖典イヴェラには主に王権神授についての内容が書かれており、早々に合併工作を了承していた国々の王には神からの特別な役割を得たというものだ。それにより、北部列強にはある意味強力な結束力があり、各国の民衆には以前には考えられないような列強国間の移動が可能となった。また、階級社会としての特色はもともと北部諸国では目立っており、批判的考えを持つ者は多くなかった。
聖職者であるクラウドと呼ばれる神の意志の通達者が最高位に君臨しており、その他には神官や祭祀を取り行うものたちなどが順に高い地位を誇っていた。列強国内でのそれらの役職には統一が図られ、ある程度言葉が違う国家の中でもクラウドやそれに近しい役職などの地位や扱いは殆ど等しいものに整えられた。
北部列強は強国ザパリキアを含め、7国で構成されている大国の結集であり、合併までの間には最も激しい対立を繰り返していた地域であると知られている。中でも大陸で最大領地を誇るカニシアと騎馬の名産国であるアショルンカは列強の中でも大きな軍事的役割を担っている。これらの国々は宗教で結集されてはいるものの完全に国が吸収されたわけではなく、合併というよりは同盟に近しい関係としてそれぞれ固有の領土を維持している状態となっている。
エチ教(略称Et)
― 全知全能の理に基く罪の贖罪を魂の開放を説く宗狂 ―
神に対しての固有の名称はなく、自然的観念に基く死者と自然との関係や生きている人間と自然の関係などに対して独特の考えを持つ宗教として知られている。多くの宗教が神に名称を付ける中で、神を神と表現する宗教はEtのみであり、最高神カリルデシューを信仰するCDとは特に対立関係を高めている。死後の世界を自然の一部という考えが深く、死に対しての価値観がかなり低いことから己が死ぬことや敵を殺すことに最も躊躇や不安がないといった特徴がある。
聖典コーグには主に現世と死後の世界を結びつける神の存在が記されており、生きている間に神に功績を認められるようななんらかの行いをすることの必要性が訴えられている。この信仰の影響もあり、全ての人間に役割と解決すべき問題、また死後へのボーナスポイントを貯めていくその方針は農民や商人の間でも多く受け止められ、人の役に立つことで己が救われるという考えは軍人の士気にも大きく役立っていることが知られている。
聖職者はパリキニと呼ばれる巨大な埋葬地の所有者のみであり、埋葬文化が育っていた国家間では広く尊敬を集めた。また、戦争においての死者への丁重の扱いは民間の者たちからも賛美の声が挙がり、死者に対する無礼の無さについては宗徒の誰もが誇りに思うほどのものになっていった。
中央連立国はもともと同盟関係を結んでいた国家に対し、力の弱い周辺国が吸収される形で完成した。また、軍事力は四大宗狂で最弱と呼ばれるEtの信仰国ではあるが、国家間を結ぶ連絡網や大街道などの整備は発達しており、国家間での結束や資源の融通など、もっとも移動がスムーズに行われる特性を持っている。
ミバンナ教(略称MB)
― 唯一神イギャンアルの予言を導き、神の代弁者たる王に忠誠を誓うことを説く宗狂 ―
唯一神の絶対的な存在価値を示す一方でそれと同等同質の価値があるとされている各国の王族と国王に対しての忠誠を求める宗教として知られている。特に国王が開祖とされているミバンナ国における王族の権威はその他の国家を圧倒するものがあり、中心国となっているミバンナ国は実質的に南部大同盟の全ての国家の軍事力を使用することが出来るとされている。
聖典イグには王権神授に関わる記載が多いが、その重要視の仕方は同じような聖典イヴェラを凌駕しているとされている。他宗教への弾圧態勢が強く、ファブネル教以外の宗狂国家に対しては常に派兵を行っている。また、攻撃対象も他国における貴族身分や王族関係者に対してのものが多く、ミバンナ国の命令により全てのMB国家は常に戦争態勢での日々を過ごしている。
唯一神イギャンアルは予言を司る神とされていて、過去に世界に巻き起こった大災害などの被害は事前にイギャンアルによって予言されていたものだと訴えた。ミバンナ国が大規模な軍事行動を司る一方でミバンナ国からの災害復興に当てられる資材や人員などの役割も大きく、過去自然形態において災害の多い国家の中では結束力は高いレベルのものとなっていた。また、災害復興に対する功労者や農耕において生産力を高める事業に偉大な功績を残した者にはミバンナ国からアンラヴェリスの称号と地位を与えられ、王都での安泰の暮らしを約束されることも知られている。
ファブネル教(略称FN)
― 世界の起源である海を神とし、海の元での繁栄と精霊と人間の共生を説く宗狂 -
相次ぐ宗教の誕生においてそれに合わせるようにして生まれた宗狂であり、当時の世界情勢で強大な軍事力の元で争っていた海洋国家や海洋隣接国家が一様に和平交渉を築き、主にEtとCDの脅威に対抗すべくして結集した比較的新しい宗狂。制海権を巡って争っていた多数の国家がまるでそれまでの歴史を否定するかのようにして和平協定を結んだことは大陸全体にとっての一大事であり、当時でさえ猛威を振るっていた海洋戦艦が陸上に向けられることを恐れたミバンナ国はFNとMBの宗教的対立を回避するべく不可侵条約を結び、直接的な対立は真っ向から避けた。
宗狂としての考えかたは後からついてきたものとして考える見方が強く、臨海全国家の結束は異教徒の神々によってなされたとして臨海諸国は争いの絶えなかった海の世界に平和をもたらしてくれた大陸国に対して賛美する姿勢をとったことが有名になった。FN成立以前から猛威を奮っていた海洋戦艦は神の加護という名目のもとで島国から港市国家までを護り、大陸上で凌ぎを削る国家はFNの支配領域に安易に踏み込めない状態が長く続いていた。
また、臨海国家が争いのために発達させていた戦艦が最終的には共有財産となったため、海の精霊と呼ばれる編制部隊が海を渡って各地の臨海国家に攻撃を仕掛けるという神の名目に乗っ取った攻撃的な姿勢が目立った。さらに、そんな中で聖典を持たなかったFNの中で攻撃対象であったCDの中で見つけたイヴェラのその一部を引用し、同じイヴェラの名を使っての信仰の拡大を目指した。それにはFNがいずれCDを吸収してみせるという明瞭な挑発が含まれていることから、大陸の交戦事情はCDとFNの戦いが熾烈を極めるものとなっていた。
ストラウベル教(略称SB)
― 無神論を説く宗狂 ―
CDを信仰する北部列強において突如離反した強国ザパリキアが宣言した宗狂。無神論を強く訴え、戦場において、CDの戦神を表す雄トナカイの横顔の旗を否定するような雄トナカイの横顔に豹の横顔を被せる旗で
完全にCDの否定を行った異様な国家の信仰。
と、だいたいまとめるとこんな所でしょうか。
この世界の舞台である大陸のつくりですが、これは単純に縦長の長方形のような形だと思ってもらえると良いと思います。そして北部列強・中央連立国家・南部大同盟・臨海全国家の分布については、ローマ字のEを意識してもらえると良いです。三本並んだ横線は上から北部列強・中央連立国家・南部大同盟、そして長い縦棒は長方形の辺に交わっているような位置で存在しているのが臨海全国家です。臨海全国家とは言いますが、これらの国は西の海洋に面している国家のことであり、北部列強の上部にも海は存在しますし、海で戦うための兵力もあります。
海洋では最強を誇る無敵艦隊の所有者FNですが、陸上での戦争においてはCDに大きく劣り、機動力さえ十分に確保されてしまえばCDはFNの強大な脅威となります。しかし、EtやMBの南部からの攻撃が止まないうちにはCDの大規模遠征は難しく、いわば熾烈を極める膠着状態が長い間四大宗狂の間で続いていたのです。
さぁ、そこでインフィス君などが所属するSBの登場。
無神世界を説くSBを国教に定めるザパリキア国は、ほぼ直線状に並んでいるCD文化圏及び北部列強国の中で東から二番目の位置に存在し、東にパータル、西にはプティアラという強国が存在しています。物語上でインフィス一行が襲撃を仕掛けたハンス城が存在するハンス家領地は最終的にはCD支配圏ですが、プティアラに所属する地域となっています。
さらに補足として、この作品でよく出るような数量単位の表し方についてご説明します。
主に時間(t)を表す場合 y×Z この場合のyは60の場合は1時間を表し、60×3の場合は3時間を指します。また、秒単位の場合は○○のように表します。12秒であればヒトフタ。4秒であればマルヨンです。
主に距離(m)を表す場合 P×Q この表記はどちらもmと㎞を表す2種類があり、わかりずらいかと思いますが、おそらく見分けるコツはあるはずです。この単位については詳しく考えている最中です。
主に人数を表す場合 H×T これは1000人以上の人数を表す場合に使います。10×100であれば1000ということですね。
小隊:50 人程度の兵士の単位。指揮系統が確立していて、隊長がいなくてはいけない。
中隊:100 ~ 300 人の兵士を表す単位。一番操作性がよく、バランスが良い。
大隊:1000 ~ 4000 人を表す規模の兵士の単位。また、とりあえずいっぱいという意味での大隊もある。
大小隊:50 ~ 100 人の単位。一概に中隊として扱われることも多い。
小大隊:300 ~ 1000 人の単位。中途半端で一番操作が面倒な単位なのでまず使われない。
連隊:5000 ~ 20000 人の単位。結局は大隊別の指揮官がいる。とりあえずいっぱいという意味もある。
旅団:6000 人程度で構成された指揮系統が一つの隊。
師団:10000 人程度で構成された指揮系統が一つの隊。指揮官が過労死するレベル。
班:10 人程度で構成された特殊隊。精鋭班や特殊工兵で構成される場合が多い。
では今回はここで失礼します。
(*'▽')