-第2話-「消滅」
新たなスキルを獲得した俺は、バッサバッサと敵を狩り、遂にレベル8に到達した。
「ふぅ~、やっとレベル8か…」とため息をつき、モンスターがいないと確認してから、腰を落ち着ける。
スキルを使っての狩りは爽快だった。
派手なエフェクトを伴い発動するスキルは圧巻であり、使ってる自分が酔いしれてしまう快感があった。
メニューを開くと、そろそろ武器や防具の耐久値が無くなってしまうので、町に帰る事にした。
町に帰り、武具屋を探す。
マップを開き位置を確認して、武具屋へ向かい、武具の耐久値を回復させようとしたのだが…。
武具屋には、プレイヤーとおぼしき人が立っている。
「あ、あの…武具屋ってNPCが運営してるんじゃ…?」
「NPC?なんだそりゃ?俺は武具屋のトッドだ」
よく見ると、名前が青い。
フィールドのモンスターは赤、プレイヤーは白だったので、何かしらの区別があるのだろうが…なんの区別かまるでわからない。
「トッドさん?ってプレイヤーですか?」と訪ねると「プレイヤー?なんだそりゃ?」の繰り返し。
もしや、この人NPCか?と思い話を進める事にした。
武具の修理を頼み、少し待つ。
このゲームでは、武具の修理は多少時間が掛かるようだ。
トッドさんの動きを見ると、不自然な点はなく、初対面ではプレイヤーと間違えてしまうほど精巧に作られている。
これが技術の進歩か、と思わなくもない。
と思っていたら、修理が済んだ用で、武具が帰って来た。
トッドさんに礼を言い、その場を去る。
ふと時間を確認すると、4時半だった。
そろそろ止めないとな、と思いつつ、町の外へ。
外に出ると、一人の女性が、木の前で倒れていた。
一見してよくゲームで見るおばあちゃんのような服装をしているが、中身は綺麗な女性で20代前半だろうか?
名前が青いので、NPCだろう。
だが何故こんなところにNPCが?と疑問に思い、事情を聞いてみる。
彼女の名前はエミリーと言って、最初の町から、次の町へ行きたい、ということだった。
何故倒れていたかを聞くと、モンスターに襲われ、逃げ帰ってきた、とのことだった。
これはクエストかな?と思いつつ、話を聞く。
一緒に次の町へいってくれる人を探しているのだそうだ。
推奨レベルが8とギリギリ行けなくはない。
ので、初のクエスト「隣町への護衛」を受ける。
隣町までは、平原フィールドと森林フィールドを抜けなければならないのだが、森林フィールドには行ったことがない。
推奨レベルに届いているので、多分大丈夫なのだろうが、少々怖い。
怖じけづいてもしょうがないので、行くには行くが。
平原で襲ってくるモンスターを倒し、森林へ。
森林には、イモムシ型のモンスターや、羽虫系のモンスターがわんさかおり、進むだけでも一苦労だ。
幸い、攻撃力はさほど高くないので、どうにか進めてはいるが、ボスには到底、勝てそうにないな、と思った矢先にひときわ大きな羽音がして、
上を向く。
NPCのエミリーが急に怖がりだし、俺もめちゃくちゃ動揺する。
キングビートルLv10と書いてあり、敵のHPが2段ある。
縦1メートルの横2メートルサイズのカブトムシ型のボスだ。
一瞬、え?めちゃくちゃ強そうなんだけど?勝てるの?これ?と思ったが、どうやらエンカウントしたら逃げられない仕様になっているらしい。
覚悟を決め、立ち向かうが相手のHPはいっこうに減らない。
戦闘から5分、上段のHPがようやく半分に到達した。
ただし、エミリーを守りながらの戦いなので、こちらもボロボロである。
悲しいかな、スキルを使ってもあまりダメージが通らない。
一応、エミリーにも体力はあるのだが、めちゃくちゃ低い。
このクエスト、難易度高くねぇ!?と心中で叫びながら、戦う。
エミリーへ攻撃が来たので守ろうとした時、転けた。
そのままエミリーにダメージが入りHPがレッドラインに突入。
無慈悲な追撃を食らい、エミリーの体が霧散した。
消える直前に助けを求めるような顔をしていたのは気のせいだろうか?
そして、そのまま俺も、キングビートルに呆気なく倒され、町へ戻ってくる。
「いや~、難易度高かったなぁ~…」
と言って、今度受けるときはレベルを上げてから挑戦するか、などと軽い考えをしていた。
そして、レベル上げの為に町から出る。
すると、エミリーの姿は何処にもなかった…。