主人公、なりそこねる
第1話「主人公、なりそこねる」
目を開くと、一面真っ白だ。真っ白な部屋だった。
窓も扉も見当たらない。洋画かよ!と、叫びたかったが、いい子にしてた方が賢明だろう。それにしても、なぜこんな部屋に、パジャマで突っ立ているのだろうか?
・・・・・・「お目覚めかね?」
突然、声が響いた。なかなか渋いチョイスだ。
「だれですか」
・・・・・・「私は神だ」
出たー、いきなり神と接触。テンプレですわ!まさか異世界
・・・・・・「転生ではないのだよ」
「じゃあ早く生き」
・・・・・・「返れないのだよ」
「神サマじゃないんですか?」
・・・・・・「ルヴ=ケルカラン、破壊神だ」
「・・・え?」
・・・・・・「昨今の異世界の転生者の増加により、これ以上転生はできなないのだよ無論、生き返ることもね」
嘘だろ?こういう作品は、もっとテンポ良くことが進むじゃないのか?
「マジ、ですか?」
・・・・・・「真実だ」
じゃあ、何故、ナゼ、なぜ自分は、ここに立っているのだろうか?
・・・・・・「わたしが消滅寸前の君を拾ったのだよ」
おかしい。破壊神が情けを?絶対おかしい。
・・・・・・「取引をしないかね?」
「・・・」
・・・・・・「なぜ死んだのか知りたくはないのかね」
「・・・」
・・・・・・「もう、サブカルチャーは楽しめないのだよ」
「分かったどうすればいい?」
・・・・・・「転生者を間引きなさい」
「間引く?間引くとどうなる?」
・・・・・・「その分また転生や返魂ができるようになる」
「方法は?」
・・・・・・「探し出して殺すんだよ」
ころ・・・す?
・・・・・・「君が、するのだよ」
だめだこれはだめなやつだ。今すぐ取り消しだ。そんな感じでナシにしてもらおう。うん、それがいい残念だけど、清く消えよう。
・・・・・・「君はYesと言ったはずだが」
「・・・あ」
「ちょ、わかったとは言いましたがYesとは」
・・・・・・「承諾したではないか」
やられた。
・・・・・・「神の前では口約束も皆全てが等しい」
「・・・」
・・・・・・「さぁ、君に二つの贈り物をやろう」
「・・・」
一瞬で服が変わった。体を覆う真っ黒なコート。下にもなにか着ているようだが見る気にもならない。白い部屋に黒い服嫌味かよ。
・・・・・・「二つ目は、『力』だ」
「・・・」
・・・・・・「破壊としての私の力の一部をきみにあたえたのだよ。君は死ねない。生きてもないし、死んでもない。だから死ねないのだよ。さぁ最初の仕事だ」
仕事?この部屋には何も・・・
目の前に、人がいる。突然、人間が現れた。何より、何よりその女性は、あかんぼうをだきかかえてる。
悪寒が走った
・・・・・・「君は、時々鋭いな」
(いやだ)
・・・・・・「転生者だぞ」
(いやだ)
・・・・・・「二人共だ」
(いやだよ)
女性はその場に踞る
(だめだ)
「私がてびきをしてやろう」
(やめろ)
右手はゆっくりと女性を捉える
(やめろ)
赤ん坊が泣き出した
(やめてくれ)
刹那、2人は爆散した。血肉は自分を貫通してべっとりと張り付いた。赤、黒、そして赤。
吐いていた。何度も、何度も、何度も。その臭いが、花を通る。
泣いていた。何度も、何度も、何度も、何度も。その瞬間が、頭が離れない。
・・・・・・「おめでとう」
・・・・・・「今日から君は、人殺しだ」