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その1 とっかかり

前作2話「書けそうで書けない小説」「書けそうで「なかなか書きだせない」小説」の続編です。

短編ではなく、連続投稿にしました。

 定年が近い私が、ひとつの趣味として取りかかった「小説家になろう」への小説投稿は、何度も挫折を迎えていた。

 最初に書き出した「桜花改開発秘話編」は、何度書き直しても、単に話しのあらすじか、戦闘グライダーの取り扱い説明書にしかならないのだ。

「どうして、こうも小説にならないのだろうか」と疑問を持つが、書き終えた「小説もどき」の一遍を自分で読み返しても、何の感動も共感も出てこない。

 書かれている文書に、筆者の熱い気持ちがこもっていないのが原因に思える。

 文章自体が、気持ちが伝わらない形になっているのではないか。

 そういえば、自分の書いた「小説もどき」は、数行進んで段落になると、主語にくる登場人物が入れ替わり、誰の視点で読んでいいのか判らない。

 そう、もどき小説では、読む人が特定の登場人物になりきることができない。

 そのことに、やっと気付いた。


 面白い小説は、誰目線で書かれているかが明確で、目線が変わる時はサイドストーリーと名打って別話仕立てにしている。

 章立てをうまくつなぐ工夫がきちんと出来ていて、複数の登場人物がいても冒頭で切り替えられるため混乱もなく読者が小説の主人公とすぐ一体化できる。

 そして、主人公が出くわすさまざまな試練や乗り越えた喜びなどの感動を自分のことのように感じることができる。

 読み進むうちに、読者が主人公になり切って、小説に登場する風景を、環境を、我がことのように感じれる文章になっているのだ。

 どうやったらこんな風に書けるようになることができるのだろうか。


「そうか、まず自分の感じたことを文章にしてみよう。自分が主人公となった文をまず書くことで、気持ちが入った文とはなにかを見極めるのだ」

 そうしてできたのが、実は第一作と第二作だったのである。

 ここで学んだことは、「主人公をきちんと決めること。そして、主人公になりきって、感じたことを文字にして伝えること」の2点である。

 では、本当に書きたい「桜花改開発秘話編」の手直しをしてみよう。

 気を取り直してパソコンへ向かってみた。


 まずは書き出しの工夫だ。

 物語の主人公は誰で、どんな経歴の持ち主かをはっきりさせる。

 どんな感情を持っているのかを最初に書いてみる。

 そこを意識して、こんな具合に始まる文章ができた。


=================

 昭和20年4月2日、曇り空の下、帝国首都に来襲した約200機のB29の編隊に、蚊の群れのように、しかも幾つもの群れが次々と襲い掛かっていた。

 蚊の群れをよく見ると、帝都を守る大日本帝国陸軍グライダーの大群である。

そして、かのグライダーの群れから打ち出される38ミリ単発砲は、かなりが無駄弾にはなっているが、それでも数にものを言わせて、いくつかはB29に命中していく。

 蚊の群れに襲われた像のように、B29は白煙を吐き一機、また一機と沈んでいく。

 さらに発砲を終え残弾が無くなったグライダーは、編隊の後方まで旋回し、大型の落下傘を繰り出し、繰り出すロープとの摩擦でゆっくりと前進を止めて降下姿勢に移る。

 落下傘により降下を始めたグライダーは、落下傘とグライダーを結ぶ鋼を編みこんだ長めのロープが防空策となって後続のB29の前進を阻む。

 この防空索に翼やプロペラがからみ、墜落するB29も出始めた。


 この比較的中位の空で行われている迎撃戦を双眸で追いかける初老の男の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「やっと間に合った。これから儂の桜花改が帝国の守り神になるのだ」

 男の名前は、北義男、56歳。

 東京帝国大学第二工学部参与にして、この桜花改の開発運用を最終的に陸軍から任された軍属である。

 この桜花改の開発は、昭和16年12月に始まった大東亜戦争の少し前から北義男の構想としてあり、実現のため奔走していた。

 構想の必要性を軍部に認められ、機体の整備が現実のものとして具体的に大きく進んだのは、サイパン陥落の直前であった。

 しかし、義男は航空戦時代の幕開けを予期して、開戦前から文部省にねじ込み、各中学の運動部にグライダー操縦士を選抜、育成する航空部を追加する地道な活動を展開していた。

 こういった様々な活動が今やっと結実した、それを実感した瞬間でもあった。

 これは、大東亜戦争の終盤で首都という局地を防衛するために登場したグライダー「桜花改」を世に送り出した男の物語である。


 どうだろうか。

 読者目線だと、この主人公である北義男はどう見えるのだろうか。

 まあ、辛口評論家の娘に聞いてみるしかないか。

 続きを読みたいという、娘=評論家のありがたいお言葉があれば、元気を出して続きを書いてみよう。



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