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別れ

今まで当たり前だった事が、当たり前でなくなる。


昨日までの日常が、明日からは非日常になってしまう。



そんな日が来るなんて、想像もしていなかった。



そう遠くない未来に、この日常と別れを告げる日が来る事はわかっていたはずなのに。



そんな日が来るのはもっと先の、遠い遠い未来の話だと思っていた。



塗装の剥げたポストの立ついつもの交差点で君と別れる時、また明日と言う事が出来なくなる日が来るなんて。


初めて君に「一緒に帰ろう」と声を掛けてもらった日には思いもしなかった。




もう君と会えないかもしれない、そう考えるだけでこんなにも悲しく苦しくなるなんて。


君と初めて出会った数年前の春には考えもしなかった。




新しい僕の所属先に君がいない。


たったそれだけで胸の真ん中に穴が開いたような感覚がするなんて。




そんな事、あの日には……















「絶対に会いに行くから」


「連絡するね」


別れ際に君と交わした言葉は決して嘘ではない。


けれど、明日から始まる新しい生活の中で。


互いに知り合いも友人も新しくできて、今よりもずっと忙しい日々を送っているはずで。


だから、僕も君も今のままではいられなくて。


自由にできる時間なんて、そんなに無いかもしれなくて。


そして何より、僕も君も面倒くさがりで、筆まめな人ではないから。


そもそも、密に連絡を取り合っているかさえ、わからなくて…




でも、それでも。


僕はずっと君と繋がっていたいと思う。


これから先、何かあった時。


結婚したり、子供ができたり。


そんな時は式にだって来て欲しいし、家族ぐるみでだって会いたい。


例え遠く離れていても、数年に一度でいい。


顔を合わせたい。



実現するのは難しいし、君を縛りたくもないから。


僕は少し冗談っぽく君に言うんだ。


君と疎遠になりたくたいなぁ、って。


君がこの言葉をどう捉えるかはわからないけど。


君も、僕と同じように思ってくれると信じてる。





遠い遠い未来の話。


でも、いつかは必ずやってくる未来の話。


二人で温泉にでも浸かりながら、数十年前の青春時代に思いを馳せて、談笑できたなら。


どんなに幸せだろうか。


君の乗った電車を見送った後の、誰もいないホームで。


ふと、そんな事を思った。



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