小休止
こっからが本番です。気持ち的には(笑)
瓦礫をかき分け、どれくらい走っただろう。空は既に闇を落とし始めている。今のところ、闇の人は周りに見当たらない。
水道管が裂け、そこから水が滴り落ちていた。忍者---はそこで腰を落として、ヨウコに足を出すように言った。少々ヒールのある靴を脱ぐと、血塗れの足がやっと開放されたかのようにずるっと出てきた。
忍者はその足をそっと滴る水の下に持って行き、血を洗い流した。だいぶマメもできていて、腫れてもいる。忍者の大きな手は優しく足を包み込み、そっと洗う。ヨウコはつかの間の安堵を得た。両足を洗ってもらうと、忍者は包帯を取り出して手早く巻いていく。その上で靴を履き直すと、気持ち、痛みが引いているようだった。
その間、無言。忍者は全く話さない。目だけで色々と察するしかなかった。
夜に近づくにつれ、ヨウコの不安は増す。だが、忍者は落ち着きを払っていた。「この人は、何者なんだろう・・・」今考えたところで、また、解決したところで全く意味の無い事なのかも知れない。
影の人と同じような出で立ち。大きく鋭い刀。とても大きな手。
そして、仮面の下に見える黒く鋭い眼光。
ヨウコは、安全圏と言われていた街で家族とそれなりにのんびりと暮らしていた。仕事は面白みのない事務で、日々淡々と過ごしていた。
結婚もしたがうまく行かず、若くして離婚し、実家に戻っていた。それでも幸せな日々を送っていたのだ。籠の中の鳥だった事にも気付かず。
色々な防衛軍に守られてこその街だったのだ。
ふと、では防衛軍はどうなったのかと不安になった。
この街を落とされたと言うことは、何かあったのではないか。
防衛軍は最強であると信じていた。多国籍で、世界に散らばる町々を守る要となっているのだ。こうなってしまった以上、防衛軍の情報をどこかで聞くしか無い。この人に付いて行けばわかるのだろうか。
しばしの休憩。
「あの・・・」ヨウコが口を開いた。
忍者は周りを警戒しつつ、腕の装備をメンテナンスしている。
「あの・・・。」
「何だ」
「私はヨウコです。」本当は蓉子と書くのだが、あえて説明しない。
「・・・・あなたは」
忍者は無言で今度は剣の血を拭き取っている。動きに無駄がない。
やがて口を開いた。
「オダギリだ」
「オダギリ・・・さん」
ますます日は落ちる。
「そろそろ行くぞ。あとすこしだ。」
あと少し。何回聞いた言葉だろう。
でもあとすこしなのだ。オダギリは蓉子の手を離さなかったし、もうこの人を信じてついていくしかないのである。
オダギリと蓉子は、再び手を固く握り合って闇に向かって出て行った。
なるべく早く書き終わりたいですが、長いので読んでくださるキトクな方はお暇つぶしにどうぞ