魔法剣とお兄ちゃんの巻
偶然? 偶然……
リンに魔法を習い始めて三日が経った。
口は悪いが文無しの俺を泊めてくれて、魔法まで教えてくれることに感謝していた。
「もっと精神統一しろよ」
相変わらず命令口調で、罵声を浴びせる。
「リン先生、俺やっぱり無理なのかな?」
「何弱音吐いてんだよ。もう一度やってみろ」
頭ではわかっていても、中々精神をコントロール出来ない。精神的にも、体力的にも、限界が近付いていた。
集中力の欠けた俺は、不覚にも地面に置いていた銅の剣にファイア〈火炎呪文〉を放ってしまった。
偶然にも剣に炎が宿り、魔法剣が完成した。
「なんだそれ~?すげ~な」
俺は剣を拾い上げ、近くにあった樹木を切りつけた。樹木は意図も簡単に真っ二つになった。
炎の属性がつき何倍もの攻撃力になっていたのだ。
通常、銅の剣は切れ味が悪く重さで叩ききるイメージだが、ファイア剣は鋼の剣に匹敵するほどの切れ味だった。
「ポンコツは魔法より、そっちの方がいいかもな」
嬉しそうにリンが話す。
魔法剣を体に覚えさせる為に、日暮れまで練習は続いた。
「今日はここまでにしておこう」
魔法剣は体に掛かる負担も大きく、俺はヘトヘトになっていた。
「すげ~技覚えたな?」
俺達の練習を見に来たおやっさんが言う。
「どうだい? おやっさん俺の魔法剣」
「まだ改善の余地はあるが、使えるな」
俺は自慢気に笑った。
「よし、それじゃ、明朝例の魔法の鍵を取りに行くか? だいぶ遅れちまったし、頃合いだろう?」
俺とリンはそれに同調して頷いた。
「今日の所は、早く体を休ませるんだな」
おやっさんに言われた通り、練習を切り上げリンの家に戻った。
その夜、俺は寝苦しくなり目が覚めた。
寝苦しいと言うよりは、息苦しいと言ったほうが適切かもしれない。
「ハァ……ハァ?」
いつの間にか、俺のベッドにリンが潜り込んでいた。
しかも、あろうことか、その柔らかな乳房に顔を埋めていた。
「あ~ん。お兄ちゃん」
〈こいつ、どんな夢見てんだ?〉
「うぐっ」
リンが両腕で俺を抱え込み、更に胸に埋める。
「く、苦しい。でも、嬉しい」
どさくさに紛れ、リンの乳房と戯れ朝を迎えた。
「おはよう……」
完全に寝不足だ。
「おはよう。おい! 目が真っ赤だぞ! お・に・い・ちゃん」
〈ギクッ〉
〈こいつ、起きてやがったんだ〉
リンには騙されたけど、悪い気はしなかった。
朝食を軽く済ませ、俺達はおやっさんの武器屋に向かった。
魔法剣を習得したポンコツ。
次に待ち受けるものは?