教えてリン先生の巻
リンに俺は魔法を習うことになった。
虹色の水を、一口飲んだ俺は魔法の力が宿ったらしい。
しかし、おやっさんの話ではそれだけでは魔法は使えないらしい。
そこで、俺は魔法の得意なリンに習うことにした。
「じゃ、リン頼むわ」
「リン先生と呼べ」
相変わらずの命令口調だ。
魔法を習得するためだと、自分に言い聞かせ我慢した。
「先生、何をすればいいんですか?」
「そうだな……まずはこの本を神父様に届けて」
「お言葉ですが、先生。魔法と関係ないと思うのですが……」
納得のいかない俺はリンに口答えをした。
「うるさい。やれと言われたらやれよ」
「はい、はい」
「はいは、一回!」
「はい」
まるで、親に怒られる子供だ。
〈いつか絶対見返してやる〉
これが、そう思ったきっかけだった。
「教会に行ってきま~す」
〈教会と言えば、あのクソ神父。見違えた俺を見てビックリするだろうな〉
虹色の水を入手した後、おやっさんの心意気で、〈革の鎧〉〈革の盾〉を買ってもらい気分は冒険者になっていた。
教会に着くと、例の神父が俺を迎えた。
「おぉ、あなたはいつぞやの……クサイ旅人。名前は確か……ポ、ポ、チ〇ポコ」
「あんた……わざと間違えたろ? ポンコツだよ、ポンコツ!これリンが、あんたにって」
俺はリンから預かった本を渡した。
「確かに渡したからな、じゃあな」
「待ちなさい。あなた前と違う。生き生きしてる。生きる目的見つけたか?」
俺は何故神父は片言の言葉なんだろうと思いながら、問いに答えた。
「見つけたよ。大切な仲間のために、頑張る。それが、俺の生き方さ」
俺は少し格好つけて、クサイ台詞を吐いた。
「あなたやっぱりクサイ人。セーブさせてあげましょう
俺は日記に名前を記し、セーブした。
「神父さん、世話になったな。それじゃ、俺行くわ」
教会のドアノブを掴むと、何かが俺の手にねっとりと付いた。
振り返ると神父は笑い転げている。
「くそ……あの野郎。いつのまに仕込んだんだ」
俺と神父の幼稚な戦いは終わっていなかった。
「お~い、リン。置いて来たぞ」
「遅いぞ! 次はこれを読め。魔法の基礎が載っている本だ。時間がないから、早急にな」
辞書ほどの厚さの本が五冊ほど、目の前に並べられた。
「これが魔法の基礎が載っている本か」
本を開くと、最初の数ページだけ説明が書いてあるだけで、ほとんどが白紙だった。残りの本に関しても同じだった。
俺は〈どういうことなのか?〉とリンに尋ねた。
「結局は努力とセンスの問題ってことさ。早速やってみるか? まずこの枝に火をつけてみろ」
本に記されていた通り、目を閉じ詠唱してみた。
掌に僅かな暖かさを感じる。
「ファイア〈火炎呪文〉」
「あちちっ。お前何するんだよ。最低……」
俺が目を開けると、枝ではなくリンの服が僅かに燃え、柔らかそうな胸が露になっていた。
「やった! 色んな意味で」
リンに軽くどつかれたけど、俺にも魔法が出来たという喜びと、意外にもリンは巨乳だったという発見とで、生きてて良かったと実感した。
確実に成長していく、ポンコツ。
ニセ勇者だからと言って舐めてもらっては困る。