対決!巨大ミミズの巻
初めての実戦を終えたのも束の間、新たな敵が。
初めての実戦を終えたのも束の間、本当の訓練はこれからだ。
やがて目的のダンジョンが姿を現した。
「ここからが、本番だ。油断するなよ」
俺とリンは力強く頷いた。
人工的に作られたダンジョン内は、冷やかで外気との温度差を感じる。
身震いしながらも、俺とリンはおやっさんに先導されながら、奥へ奥へと進む。
薄暗いダンジョン内では頼りない松明の明かりだけが頼りだ。
奥に進むにつれ、多湿になり、地面も苔で埋め尽くされ滑りやすくなってきた。
「まだですか? お頭~」
不安からだろうか、しびれを切らしリンが口を開く。
「安心しろ。虹色の水は目の前だ。だがな、そうは簡単に行かないみたいだぜっ」
おやっさんがそう言い放つと、目の前には巨大なミミズが立ち塞がる。
「以前は、こんな奴居なかったんだがな。おい、ポンコツっ。これを使えっ」
おやっさんは背中に隠していた銅の剣を俺に渡した。
「さっきの実戦を思い出せ! 今のお前なら使えるはずだ」
銅の剣を受け取ったものの、俺には使いこなす自信がまだなかった。
考えている暇はない。
巨大なミミズはその体型とは似つかない素早さで襲い掛かってくる。
さすがのおやっさんも苦戦しているようだった。
〈何とかしなければ〉と思うが足がすくんで、俺は全く動けなかった。
「ファイア〈火炎呪文〉」
後方からリンも、おやっさんの援護をする。
「くそ……俺は何て臆病者なんだ。俺は……俺は変わったんだ! うぉぉぉ」
剣を振り上げ巨大なミミズ目掛け夢中で走った。
地面を蹴りあげ、そのまま巨大なミミズの頭部に剣を突き刺した。
鈍い光を放った剣を引き抜くと、そこが急所だったのか、激しく暴れまくり、やがて呼吸が小さくなっていった。
「お~い、ポンコツ。やったなぁ、あれどうやったんだ? 見直したぞ」
リンが俺の肩をポンと叩き、勝利を称えた。
俺はその場にヘナヘナと座り込み、答えた。
「どうやったか、わかんねぇんだ。体が勝手に……」
「参ったな、お前には。弱いのか、強いのかわかんねぇな」
自分でもわからなかった。ただ俺は追い込まれると、力が湧いてくるのだけは今回のことで確信した。
常にその力を発揮することができればいいのだが。
「おい、あったぞ。これが虹色の水だ」
おやっさんの指差す方向には、泉があった。
その場所だけ光が射し込み、虹色に水面が揺れている。
「そう言えば、虹色の水の効果を話してなかったな。こいつはなぁ、一口飲めば魔法が使えるようになる不思議な水よ。」
「マジかよ、すげぇな」
「但しだ、魔法の勉強はしないと駄目だがな。俺も飲んだけど、何せ勉強嫌いだから魔法が使えねぇんだ」
おやっさんはそう言うと作り笑いをした。
「まぁ、その分武器に振りかけて魔法の力をあやかってる訳だ」
当たり前だけど、俺の知らないことがあった。
俺の知らないとこで、皆苦労していた。
俺はニセ勇者で何者かもわからないが、おやっさんとリンがいるだけで、救われていることがわかった。
「さて、虹色の水を汲んでとっとと帰るぞ。俺達の目的は、これじゃねぇ」
おやっさんは真面目に言ってるつもりだったが、ダメージを受けた鎧の隙間から、時折顔を出す網タイツが俺は気になっていた。
はてさて、どうなることやら。