空中要塞への巻
最後の戦いの舞台になる空中要塞へ降り立った。
遥か上空、雲の切れ間を抜けるとそこには、この時代には似つかわしくない近未来的な要塞が姿を現す。
空中に浮かぶその要塞は、一際異彩を放ち虎視眈々と俺達を飲み込もうとしている。
俺達が要塞に近付くと、まるで歓迎するかのようにブリッジに備え付けられている鉄の扉は口を開けた。
「いいか、皆。命は一つしかないんだ。無駄にするなよ」
「お兄ちゃん……」
恐怖を払拭するかのようにリンは俺に抱き付きキスをせがんだ。
俺は優しく抱き締め返し、唇を重ねた。
何度となく交わしてきたキスの中でも、最も濃厚で、最も長いキス。 互いの気持ちを繋ぐかのように舌は、激しく絡み合い、練っとりとした唾液はそれぞれの体内に吸収された。
「リン、愛している。必ず、生きて帰るぞ」
「私も愛してる……」
「あ~あ。見ちゃいらんな~い。私達も戦いが終わったら、いい男探そうね、レイ」
「そうですね……」
二人には悪いと思ったが、正直な今の気持ちを俺はリンに伝えたかった。
この先、何があってもいいように。
奥へ進むと機械仕掛けの無機質な空間が果てしなく続く。
太い配管やら、動力パイプやらが配置された部屋を何度か通過し、強固な重い扉を抉じ開けるとただならぬ殺気を感じる。
両手に大剣を装備し、生気のない機械の化け物。
「シンニュウシャ、アリ。シンニュウシュ、アリ。ワタシハ、デスマシーン。タダチニマッサツスル」
その先の扉を守るデスマシーンは突然俺達に襲ってきた。
レイとキャンディに向けられた大剣をエクスカリバーを水平に構え、身を呈して守る。
強烈なパワーは、エクスカリバーを持つ腕に痺れを感じさせた。
「くっ。二人とも、今のうちに逃げるんだ」
レイは逃げながらも体勢を整え、攻撃を仕掛ける。
一方キャンディは、召喚獣を召喚出来るスペースがないと判断し、弓を構え援護する。
その間にリンはサンダー〈稲妻呪文〉を詠唱し、レイの爪に稲妻を宿らせていた。
戦いのコツがだいぶ備わってきたようで、テンポよくダメージを重ねる。
デスマシーンは黒い煙を吐きながらも、激しい攻撃を繰り出す。
しかし、思わぬ長期戦に、体力も徐々に奪われ始めていた。
「キュアル〈回復呪文〉」
先程からリンは回復専門で、精神も憔悴しきっていた。
「リン、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ」
返事をするのがやっとで、作り笑顔をする余裕すらないようだ。
「このままでは、体力を使い果たしてしまいます。ここは、私に任せて皆は先に進んで下さい」
「レイ……済まない。死ぬなよ」
「こんな所で死ぬほど、私は弱くありません。倒したら、後を追います」
「うん。頼んだぞ」
俺達はレイにデスマシーンを任せて、次の部屋へ続く扉の向こうへ飛び込んだ。
レイ死ぬなよ。
ポラポラは俺達に任せろ!




