ガルシアの運命の巻
魔物になっていくガルシアを救う方法はないのか?
「頼む……隼人……早く」
「出来ない……アシュリーに何て言ったらいいんだ。俺はお前達が幸せになることを望んでいたのに……」
「お兄ちゃん……」
「うぐっ、ぐぉぉぉ……は……や……く」
構えた王者の剣に涙が伝う。
「ガルシア……許してくれ」
王者の剣を振り上げ何度も激しく、斬りつけた。
「ぐはっ、……もっとだ……」
リン達は見ていられず、目を背けじっとしている。
ガルシアは大量の血を吹き出しながらも、脈を打ち、魔物への変化が進んでいく。
手、足には鋭い爪が生え、口には大きな牙が、頭上には強固な角が。
やがて、ガルシアは完全なる魔物になってしまった。
否。ガルシアはほんの少しの理性と魔物に変化した今も戦っているようだ。
その証拠に、俺の攻撃を正面から受け止める。
まるで、自分への戒めを受け止めるかのように。
「ガルシア……ガルシア……」
俺は泣きながらも、ガルシアとの約束を守るため攻撃の手を休めなかった。
「ぐぉぉぉ、ぐぉぉぉ」
言葉にならないガルシアの叫びが、こだまする。
どんなに激しく斬りつけても、ガルシアは悪しき心と戦っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
息を切らし、一度攻撃をやめる。
ガルシアもいよいよ最期の時を迎えようとしていた。
ガルシアは傷だらけになった体を全面に出し、両手いっぱい広げる。
〈さぁ、とどめを差してくれ〉と言っているかのように。
俺は剣を構え直し、ガルシアに向ける。
「だ、駄目だ……出来ない、出来るわけがない……」
「隼人……」
「お兄ちゃん……」
「隼人!」
躊躇する俺に仲間達が呼び掛ける。
「お兄ちゃん……勇気を持って、アシュリーだってわかってくれるよ」
「だって、愛する人を失ったら……」
俺はその場に崩れ落ちた。
「あたしがやります」
誰かが崩れ落ちた俺の肩をポンと叩いた。
アシュリーだ。
大きくなったお腹を抱えながら、アシュリーはこんな辺鄙な場所に現れた。
「ガルシア……あたしはあなたを愛していました。いえ、今でも愛しています。あなたと出会えたこと、あなたと過ごせた日々、あたしは忘れません……。もうすぐお腹の子も産まれます。そしてあたしは、その子に伝えます。〈あなたの父は勇敢なる戦士だった〉と。あなた……あなた……愛しています。出でよ、ドラゴン……彼を……ガルシアを形なきまで……引き裂け……」
アシュリーの召喚したドラゴンは、ガルシアをズタズタに切り裂き、ガルシアは息絶えた。
〈アシュリー……ありがとう。こんな俺を許してくれ……。幸せにしてやれなくてごめんな……元気な赤ん坊を産んでくれよ。アシュリー……、アシュリー、愛している〉
ガルシアの亡骸から、優しい光の御霊がアシュリーにそう伝えると空高く舞い上がった。 そして、亡骸は煙のように消えた。
「あなた……あなた……」
泣き崩れるアシュリーに、俺はただ謝るして出来なかった。
「何も出来なくて、助けられなくて、すまない」
「隼人のせいじゃないわ。これはきっと、彼の産まれ持った運命なのよ……」
俺はアシュリーの強さに胸を打たれ、天を仰いだ。
アシュリーは自ら愛する人をなきものにした。
それは本当に愛するが故の行為。
二人の絆は相当強いものだったのだろう。




