世界樹での戦いの巻
あんたが精霊かい?
随分小さいな~
レイの毒気も浄化され、迷いの森も無事抜けることができた。
木漏れ日の中、仲間たちに笑顔が溢れ、それを見て僅かに癒される。
「ここに風の精霊、ウィンディがいる筈です」
レイの指差す目の前には、空を覆いつくすほどの巨大な世界樹が姿を現した。
その世界樹の前に手のひらほどの物体が飛び回る。
「もしかして、あんたが風の精霊?」
俺はその物体に話し掛けた。
「そうじゃ。わらわが風の精霊ウィンディじゃ。そなたらが来ることはわかっておった。風が教えてくれたのじゃ。早速、王者の剣に輝きを与えようと、言いたいところじゃが、世界樹に魔物が住みついて真の力が出せんのじゃ。討伐をお願い出来ぬか?」
「わかった。任せてくれ。皆行くぞ」
「待つのじゃ、世界樹の中では結界が張られており、魔法が使えん。その胸の大きいオナゴは、わらわはと一緒にここで待つのじゃ」
「えっ? 私? そんな……せっかくここまで来たのに力になれないなんて」
リンは肩を落とし、項垂れた。
リンの気持ちは痛いほどよくわかる。
おやっさんのため、王者の剣のため、ポラポラを倒すため、ここまで来たのに。
「リン。ここは俺達に任せてくれ」
俺は優しくリンの肩を抱いた。
リンの頬に一筋の涙が伝う。
それを俺は指先で拭ってあげた。
「お兄ちゃん……頼んだよ」
「あぁ。任せておけ。レイ、キャンディ準備はいいか? 行くぞ!」
足元にまとわりつく茂みを掻き分け、世界樹の中へと足を踏み入れた。
世界樹の中は、ひんやりと涼しく、意外にも広かった。
その入り組んだ空洞は、自然が作り上げたダンジョンとも言える。
乾燥した箇所、じめじめと多湿な箇所、日の当たる場所により様々だ。
徐々に狭くなる空洞を潜り抜けると、世界樹の外に出た。
辺りを一望出来る大パノラマが広がる。
ちょっとした感動に浸っていると、ウィンディの言っていた魔物が横になり寛いでいる。
まるで自分の住み処のように。
魔物は俺達の存在に気付き、慌てて起き上がる。
「遅かったじゃな~い。僕の名はガルーダ。ポラポラ様の悪魔騎士団の一人よ。さぁ、その命貰うわよ~」
その鳥の化け物はポラポラの悪魔騎士団の一人と名のり、すぐさま襲ってきた。
二人に〈行くぞ〉と声を掛けようと、した瞬間、俺の横でキャンディが踞っている。
〈しまった。キャンディは高所恐怖症だったんだ〉
思った時はすでに遅く、ガルーダは急降下して鋭い爪で攻撃を仕掛けてきた時だった。
「危ない~」
異変に気付いたレイのお陰で、何とか爪を受け流した。
しかし、次はこうは行かない。
キャンディに下がるよう命じ、俺は剣を構えた。
「レイ、キャンディは高所恐怖症なんだ。俺達だけでいけるか?」
「そういうことだったのね。任せて下さい。修行の成果を見せます」
「 戯れ言を。君たちはここで死ぬんだよ。死ね、死ね――ッ」
ガルーダの巨大な嘴を辛うじて、受け止める。
その動きを見届けレイは空高く、高く飛び上がった。
落下と共に、広げた両腕の鉄の爪がガルーダの翼を引き裂く。
体勢を崩したガルーダに、俺はロングソードを叩き込んだ。
「こ、こんな筈では……ぐぁ」
ガルーダは力なく横たわり、煙のように消えた。
「ふぅ、何とかなったな。レイ……強くなったな」
俺はレイの肩をポンと叩いた。
高い所は苦手だよ~。
次は頑張るよ……
キャンディより。




