再会の巻
新たな冒険には仲間が必要だ。
俺達はアシュリーを訪ねた。
石化したおやっさんを見届け、俺は呪いを解くことを誓った。
「そうだ、お兄ちゃんこれ。王者の剣」
久方ぶりに手にした王者の剣は輝きを失い、錆び付いていた。
リンの話では、四人の精霊に鍛え直してもらうことで、失われた輝き、切れ味が戻るという。
ただ現時点では、精霊の所在までは、わからないらしい。 リンは密かに、そこまで調べあげていた。
俺は錆び付いた王者の剣を背中に背負った。
「リン、とりあえず装備を整えたい。ウェンディーに飛んでくれないか?」
俺とリンは四人の精霊の情報収集を兼ね、装備を整える為にウェンディーに向かった。
一方その頃
ここは言わずと知れたマザーブース
「ふぅ。危ないところでした。まだ完全な再生には時間がかかりそうですね。その間、私の部下たちに遊んでてもらいますか。勇者隼人……許しませんよ。今度こそ、本当の恐怖に陥れ息の根を止めてあげます。必ずや……」
そんなことが起きているとは露知らず、俺達は暢気に武具を選んでいた。
「もう少し負けてくれよ」
「駄目だ。これ以上は譲れない。こっちも商売だ」
やっとの思いで購入した武具は、ロングソードと鋼の鎧。
ないよりはマシだと、それで手を打つことにした。
次は精霊の情報収集だ。
一日中駆けずり回って得た情報は、迷いの森に精霊の一人がいるらしいと言うことだけ。
その後は大した情報も得られず、その日は宿を取ることにした。
燭台の火がユラユラと俺とリンを仄かに照らす。
「明日、朝一で名もなき村に行こうと思う」
「アシュリーのとこに行くのね」
「あぁ。以前より魔物も強くなっているようだ。アシュリーの力も借りたい」
「私もそう思うよ」
「決まりだな。そうと決まれば今夜は早く寝よう」
まだ見ぬ敵への不安を胸に、眠れぬ夜を過ごした。
そして、夜が開けた。
夜明けと共に、名もなき村へと向かった。
相変わらず長閑な田園風景が広がる。
規模が小さい村だけあり、アシュリーを見つけるのにそう時間はかからなかった。
「アシュリー、久しぶりだな」
「隼人、それにリン。この世界に戻ってきたんですの?」
俺はいままでの経緯をアシュリーに話した。
「あたしもリンも、異変に気付いた時は、すでに魔物達が力をつけた後でした」
アシュリーの話で、二人とも苦戦を強いられていたことがわかった。
「アシュリー、それを踏まえて頼みがある。もう一度俺達に力を貸してくれないか?」
「それは出来ません」
アシュリーは真っ直ぐ俺を見て答えた。
きっと力を貸してくれるだろうと期待していたが、見事に裏切られる結果になった。
「訳を教えてくれないか?」
躊躇いながらもアシュリーは答えた。
「赤ちゃんが、お腹の中に赤ちゃんがいるの」
お腹を擦りながら話すその姿は、もはや母親の顔だった。
そして、アシュリーは続けた。
「あなた~」
そこには見覚えのある男が佇んでいた。
「お、お前はガルシア。何故、生きている?」
ガルシア。先の戦いで隼人が破った強敵。
「隼人、話を聞いてくれ」
俺は構えた剣を、一旦引っ込めた。
「わかった……」
「俺はもともと人間だった。だが、当時の俺は力こそすべてと考え、力を得るため悪魔に魂を売った。魔界で高い評価を受け、俺はナンバー2にまでのし上がった。しかし、それは間違いだとお前との戦いでわかった。生まれ変わったら真っ直ぐに生きようそう思った。気が付くと俺は、この世界の浜辺にいた。きっと魔王が破れた今、俺に掛けられた術が解け生き返ったのだろう。俺は行く宛もなく、何日もさまよい続けやがて気を失い倒れた。気が付くと、温かなベッドで目を覚ました。アシュリーが助けてくれたのだ。その優しさに触れ、俺は恋に落ちた……」
「隼人……ガルシアは心を入れ替えたの。信じてあげて」
「隼人よ。俺を信じられぬのならば、今すぐ俺を斬り捨てるがいい」
ガルシアはそう言うと静かに目を閉じた。
俺は一度引っ込めた剣を構えた。
「お兄ちゃん、やめて」
俺は剣をガルシアの喉元に向け言った。
「必ず、アシュリーを幸せにするんだぞ。もし、妙な真似をしたらお前を斬る」
「あぁ、そうしてくれ」
俺とガルシアは硬い握手を交わした。
「リン、お前知ってたのか?」
「私も知らなかったよ」
「そうか……。アシュリー幸せにな。行くぞ、リン」
「待って下さい。私の代わりに、この子を連れていって下さい」
さっきから、アシュリーの周りをうろちょろしていた子供を指差す。
「こんな子供を?」
「子供をとは何だ! 私はもう十二歳。十分大人よ」
その緑の髪の少女は言う。
「だって、胸もぺったんこだし……」
「な、失礼な。私が気にしていることを……」
「二人ともやめなさい!」
リンが俺達を止めに入る。
「隼人、この子はね、この村の召喚師第一継承者なのよ。実力的にはあたしより上よ」
「へへ~ん」
少女は、してやったりと言わんばかりの表情を見せる。
「お前、名前は?」
「キャンディ・ノア・ポアール。キャンディって呼んで」
「キャンディに召喚獣は引き継いでもらったわ。それと、キャンディは弓術も長けているから、きっと役に立つと思うわ」
「キャンディ、よろしくな」
「よろしくね」
「うん、任せて」
こうして俺達は新たな仲間〈キャンディ〉を加え、更なる冒険に出る。
アシュリー派の人、ごめんなさい。
これからはキャンディを応援して下さい。




