続ベルナの街にての巻
ニセ勇者ポンコツのバイトが始まった。
店番を始めて一時間ほど過ぎた。
客はちらほら来たが、こん棒や銅の剣など比較的安価なモノばかりが売れ、高価な鉄の鎗などは売れ残っていた。
〈何処の世界も不景気なんだな……〉
そんなこと思いながら、何の気なしにレジ前の引き出しを開けてみた。
「これはなんだ?」
〈お仕置きバー ルージュ 会員番号001〉
ゴールドに輝く、そのカードには店主の名前らしきものが刻まれていた。
「おやっさん……」
俺は見てはいけないものを見てしまった罪悪感に苛まれた。
日が暮れ始めた頃、おやっさんが帰って来た。
心なしか清々しい表情をしている。
「ご苦労だったな。それで、武器は売れたかい?」
「まぁ、それなりに……」
俺はおやっさんに売上金を渡した。
「ほう、なかなかやるじゃねぇか!これは今日のバイト代だ。取っときな」
俺はおやっさんから100ゴールド受け取った。
「こんなにいいんすか?」
「おう!俺の気持ちだ。また、頼むぜ」
多少気になることはあったが、おやっさんのお陰で俺は生き延びることが出来そうだ。
俺はおやっさんに一礼して、店を後にした。
「さて、金も入ったし、今夜の寝床を確保しないとな」
俺は宿屋に向け歩いた。
街は人々が行き交い活気が溢れている。
ベルナの街でも一際目立つ、大きな建物が宿屋だ。
上品なレンガ造りで、この街の名物と言っても過言ではないだろう。
ドアを開け、一歩踏み入れると暖かい暖炉がロビーに備え付けてあり、疲れた俺の体を温めてくれた。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
胸元が大きく開いた若い女性が、俺に話し掛けてきた。
「あ、はい」
俺の心と俺のオレは踊った。
「では、前金で20ゴールドになります」
「はい、20ゴールド」
俺は今日入ったバイト代の一部から、支払った。
〈残り130ゴールドか。もう少し稼がないとな〉
「お客様?お客様?」
「ん?あ、何?」
「お部屋に案内します」
螺旋階段を登り、左手前が今夜の寝床だ。
「何かあったらフロントまで、お申し付け下さい」
フロントの女性と何かあったらいいなと、期待したが何もなかった。
部屋は八畳ほどの広さで、俺には理解できない壺やら絵画などが飾られていた。
一通り部屋を確認すると、俺は備え付けのシャワーで汗を流した。
「あ~さっぱりした。ん?」
俺はベッドの横に置いてあったメニュー表に目がいった。
「なになに、〈あなたの疲れを癒すマッサージ 10ゴールドぽっきり!追加料金はありません〉おぉ、これはいいな」
早速俺はフロントに電話を掛けた。
「あの~マッサージを頼みたいんですけど」
「マッサージですね?では、今からそちらの部屋に担当の者が参りますので、少々お待ち下さい」
程なくして、担当の者が俺の部屋にやってきた。
なんと、先程のフロントの女性だった。
俺は女性に言われるがままベッドにうつ伏せになった。
「お客様。こってますね~」
「わかります?」
最初はそんな他愛のない会話から始まった。
女性は上半身から丁寧にマッサージをする。
時折接触する女性の胸がオレを奮い起たせた。
「マッサージはここまでです。延長なさいますか?」
俺は念のため延長した。
先程と違い、今度は下半身を重点的に女性はマッサージをした。
俺のオレは行き場をなくし、ヨダレを垂らしていた。
「ここまでです。延長なさいますか?」
「延長!」
「延長!!」
気付けば、有り金を全部使っていた。
勿論、何もなかった。
「何やってんだ俺……」
その日はなかなか寝付けず、丑三つ時を越えた頃ようやく眠りについた。
「起きて!早く起きろってば」
やっと眠りについた俺を誰かが起こした。
有り金を全部使ってしまったニセ勇者ポンコツ。
そして、ポンコツを起こしたのは?