命尽きてもの巻
牙兄弟、黒牙と白牙との一戦。死闘は続く。
魔界から来た牙兄弟と戦うことになった俺達。
レイの生き返った今、恐れるものはない。
剣を抜き、構え、様子を伺う。
俺の憶測では、黒牙はパワータイプ、白牙はスピードタイプといった所だ。
「兄者、俺から行かせてもらうぜ」
「好きにしろ」
白牙は両手に持った短刀を振り上げ、襲い掛かってきた。
予想通りスピードは早いが、白牙の攻撃はまるでキレがない。
簡単に受け流し、反撃に出る。
聖なる力を帯びた剣は、意図も簡単にその右腕を捉えた。
白牙の血が飛び散る。
聖なる力は魔族に有効だ。
「さがれ白牙よ! お前では無理だ」
「でも兄者~。俺だって魔族の竜戦士だ。このままでは終われない」
「お前の気持ちもわかる。だが、隼人の攻撃を見ただろう? 我々のかなう相手じゃない」
「じゃあ、どうすれば?
「落ち着け。我々は誇り高き魔物の竜戦士だ。刺し違えても、奴らを倒す。それが我らの使命」
「それじゃ、兄者……」
「双竜牙を使う。我らが生きた証をここに刻む。覚悟はいいな。白牙よ」
「何をごちゃごちゃ言ってんだ。かかって来ないなら、こっちから行くぞ! レイ合体技だ! 行けるか?」
「しばらく死んでたから、身体が鈍っていた所です」
俺達が合体技で、畳み掛けようとした時だった。
「双竜牙――!」
黒牙と白牙が一体となり、無数の刃が俺達を襲った。
砂埃を巻き上げ、視界が悪い中、尚も牙兄弟の攻撃は続く。
「皆、大丈夫か?」
三人の返事がない。
「このままでは……」
大量に血が吹き出し、意識が遠退く。
「仲間をもう死なせるわけにはいかない。バ、バハムート来て……くれ」
召喚術を使える訳がないのに、俺はバハムートに助けを呼んだ。
遠くで翼がはためく音が聞こえる。
〈俺の空耳か……俺死ぬのか〉
「我らが主よ。まだ死ぬ時ではない。気力を持て。勇気を持て。」
突き刺さる無数の刃の隙間に、牙兄弟が見えた。
「うぉぉぉ。真・卍斬りだ~!」
やがて、攻撃の刃はやみ、砂埃も収まった。
「や、やったのか……」
目の前に牙兄弟は横たわっていた。
「皆は?」
三人とも、虫の息だがバハムートの背中の上で、確かに生きていた。
俺の強い思いがバハムートを召喚したのだ。
「ふぅ……」
俺は溜め息をついた。
「うぐぐぐっ」
再び剣を構え直す。
牙兄弟は、まだ生きていた。
「ま、待ってくれ。我らの負けだ。命ばかりは……」
「お願いだ。もう悪さはしねぇ。助けてくれ……」
「…………。大人しく魔界に帰ると誓うか?」
「誓う。誓う」
「この通りだ」
「隼人よ。こやつらを信じてはならん。止めをさすのだ」
「バハムート……。いくら敵とはいえ、命乞いしてる者に止めをさすなんて出来ない」
「……」
「お前ら消えろ……。俺の気が変わらぬうちに」
「ありがてぇ。感謝するぜ……お前の甘さになぁ!」
「消えるのは貴様だ!」
再び牙兄弟は隙を狙って襲ってきた。
「チッ。長生き出来たものを……。真・卍斬り」
牙兄弟は無惨にも、真っ二つに引き裂かれ息絶えた。
バハムートの言ったことは間違っていない。
ほんの少しでも俺は信じてあげたかった。例え甘いと言われようと。
俺は武人の礼をもって二人を弔ってやることにした。
生まれ変わったら、悪に染まるなと願いを込めて。
「皆大丈夫か?」
「大丈夫! もう、この通り」
リンはピョンピョン跳ね、そのたびにおっぱいが揺れる。
「バハムート。ありがとうな」
「隼人よ。次はないぞ」
「あぁ」
バハムートは空高く舞い上がり、飛び去っていった。
「そう言えば、さっきこんなモノ拾ったのですが」
アシュリーの手には、黄金に輝く金属が乗っていた。
「何か貴重な金属かも知れませんね」
「お兄ちゃん、こういう時はお頭でしょ?」
「だな。ベルナに戻るぞ。リン頼む」
「うん……」
「どうした? 具合でも悪いか?」
「ん~ん。違うの。また四人でテレポット〈瞬間移動〉出来るのが嬉しいの」
「そっか。俺も嬉しい。色んな意味で」
そんなこんなで俺達は、またベルナのおやっさんに行くことになった。
この時、俺達はもっと恐ろしいことが待ち受けているなんて考えもしなかった。
俺の甘さを許してくれ。
「お兄ちゃん、ベルナに行くよ」




