伝説の召喚獣の巻
伝説の召喚獣が俺達の前に現れた。
一筋縄ではいかないだろう。
港街に戻った俺達は船へと乗り込んだ。
目指すはウェンディーより北西の島。
シヴァの降らせた雪はすっかりと溶け、温暖な気候を取り戻していた。
しばらく船を進めると岩礁に取り囲まれた島が見えてきた。
「よし、上陸するぞ」
人影のない浅瀬に船を停泊させ、歩き出す。
島は不毛の砂漠がえんえんと広がり、その中心部に頑強な石造りの迷宮が口を開けている。
多くの冒険家がここを訪れたのだろうか? その屍は原型をとどめず風化して転がっている。
松明に火をつけ、壁づたいに迷宮の奥を目指す。
「召喚獣達が、あたしの精神の中でざわつき始めてるわ。きっと伝説の召喚獣がいるのね」
比較的無口なアシュリーが召喚獣のこととなると、目を輝かせた。
「え~。でも、また戦わないといけないんだよね? 強いよね~きっと」
「だろうな。だけど、必ず仲間にしてみせる」
「何か、お兄ちゃん逞しくなったね」
リンに言われるまで自分でも気付かなかった。
ハヤブサとの戦いで真の勇者になれたことが、内面まで変えたのかも知れない。
迷宮の先端は、広くなり墓石が鎮座しているだけであった。
「召喚獣なんていないじゃん」
「待って」
俺は墓石に目をやった。
俺の知らない古代文字が墓石には彫られていた。
本能的に墓石に手を伸ばすと、自然と意味が理解できた。
「何て書いてあるかわかったんですの?」
心配そうにアシュリーが俺の顔を覗き込む。
「汝、我の力を欲しくば、我に力を示せと書いてある」
墓石を読み終えると、轟音と共に地響きが鳴った。
次の瞬間、淡い光が駆け抜け、霧に包まれた黒い身体の大きな魔物が姿を現した。
「我が名はバハムート。最強にして最大の召喚獣。我の眠りを妨げたのは、汝か?」
俺はコクリと頷いた。
「ならば聞こう。何故、我を欲する?」
「それは、仲間を助ける為。仲間を守る為」
「うむ。わかった。では全力で掛かってくるがいい。我に勝利し時、汝らに力を貸そう。来るがよい」
バハムートは鋭い牙と爪を剥き出しにし、こちらに向け構えた。
「行くぞ。何としても勝つんだ。二人共援護してくれ」
初めから全力でバハムートに立ち向かった。
そうでもしないと勝てない相手だと、肌で感じ取っていたからだ。
リンは合体魔法、アシュリーはシヴァとリバイアサンを召喚して、よく戦ってくれている。
俺もそれに答えなくては。
バハムートの皮膚は強固で、並大抵の攻撃ではダメージは与えられない。
かつ、不用意に近付くと鋭い牙と爪はもとより、灼熱の炎の餌食になる。
俺は体勢を整え次の一手に掛けようとしていた。
俺は願いを込め、剣を天にかざした。
「聖なる力よ。我に力を……」
額の紋章が蒼白く光る。
聖なる力を帯びた剣がバハムートの身体を貫く。
バハムートは引き裂かれた身体の痛みにもがき苦しむ。
「まだだ。まだ終わっちゃいない」
〈真・卍斬りしかない〉そう思った次の瞬間、バハムートはその巨大な口からメガフレア〈巨大爆発砲〉を放った。
周囲のものが何もかも吹き飛ぶ威力。
三人とも辛うじて耐えたが、リンとアシュリーは瀕死の状態だ。
全ては俺に掛かっていた。
狙いを研ぎ澄まし、バハムートの喉元を目掛ける。
外したらレイを生き返えらせるどころか、全滅だ。
動きがスローに見える。
「今だーっ! 真・卍斬り」
バハムートは雄叫びを上げ横たわった。
「見事だ。我、汝らの為に力を貸そう。いつでも我を呼ぶがいい」
バハムートは煙のように消えた。
それと同時に優しい光が包み込み、俺達の傷はみるみる塞がり回復した。
「やったね。お兄ちゃん」
「やりましたね」
「あぁ。これでレイを生き返えらせれる」
ついに最強にして最大の伝説の召喚獣バハムートを従えることができた。
俺達はその後、おやっさんのもとを訪れた。
さすがはおやっさん。約束通り、最果ての地の場所を調べあげていた。
話によると、ここからずっと北の北。
その名の通り、本当に最果てにあるらしい。
俺達はバハムートの背中に乗り、最果ての地を目指した。
「バハムート。頼んだぞ」
「容易い、御用だ」
「おっかない顔してんのに優しいね。バハちゃん」
「……」
雲を突き抜け、山を越え、風を切る。
巨大なバハムートの翼は大空を駆け抜けた。
バハムートを従え最果ての地を目指す。
レイ。待っててくれ。必ず……必ず。




