星になる時の巻
レイは俺達の仲間だ。これからもずっと。
「キュアル〈回復呪文〉キュアル! 目を開けて、レイ。キュアル」
「もうやめろよ」
「キュアル! キュアル!」
「やめろと言っている! レイは死んだんだ」
リンは回復魔法を泣きながら唱え、やめようとしなかった。
リンの気持ちもわかるが、死んだ者が生き返るわけがない。
俺は天を仰ぎ、暗い空を眺めた。
星一つさえ見えない。
「お~い。ここに居たのね」
遅れてアシュリーも駆け付ける。
俺はこれまでの経緯を話した。
アシュリーは涙を我慢しながら、じっと俺の話を聞いていた。
「レイ、あなたを尊敬するわ」
そう言うと、杖を高らかに上げ、呪文のようなものを唱える。
「このままでは腐食してしまうので、一時的にレイを異界に送ります」
レイは色鮮やかな光に包まれ、その彼方に消えていった。
「アシュリー、今一時的にって言ったよな? どういうことだ?」
「限りなくゼロに近い話なので、あまり期待しないで聞いて下さい。その昔、こういう話をあたしは風の噂で聞きました。最果ての地に、善を尽くし命を落とした者を蘇らせる泉があると」
「その話が本当なら、レイは生き返るかもしれないんだな?」
「行こうよ、お兄ちゃん。可能性がゼロじゃないなら」
「あたしもその意見に賛成です」
「そうだな。行くしかないな」
俺達はレイを生き返らせるため、最果ての地を目指すことに決めた。
「今日はひとまずウェンディーに戻ろう。明日から情報集めだ」
リンの瞬間移動でウェンディーに戻り、眠れぬ夜を過ごした。
一方その頃。
ここはマザーブース。
「遂に真の勇者になってしまいましたか……どいつもこいつも、使えないクズばかりですね。魔界から、あのお方を呼ぶしかなさそうですね」
ポラポラは静かに目を閉じ、祭壇に向かって呪文を唱えた。
「ネテシ ンエウオ デノクカ テッバンガーっ!少し疲れたので、休むとしましょう。あのお方が来るまでは時間が掛かりそうですね。黒牙、白牙いますか?」
「お呼びですか? ポラポラ様」
「二人で勇者隼人達を足止めするのです。二人で掛かればなんとかなるでしょう」
「御意」
「御意!」
「さて、私は一眠りしますか」
翌朝、俺達は最果ての地の情報集めを始めた。
ウェンディーの城下町には裏の情報を握る情報屋なるものが多数存在した。
俺達はしらみ潰しに、情報屋を当たったが何一つ有力な情報は得られなかった。
諦めかけたその時、リンが口を開いた。
「お頭、お頭なら知ってるんじゃないかな?」
灯台もと暗しってやつだ。
リンの言う通り、情報に関しては、おやっさんは長けている。
「行こう」
俺達はベルナに向かった。
「おやっさん、いるか?」
「おぉ、ポン、いや隼人。なんか隼人って名前に違和感があんだよな。前は違う名前で……ポンなんとか。思い出せねぇ」
〈思い出さなくていい〉俺は思った。
「しかし、お前見違えたな~。勇者様みてえだ」
「お頭。お兄ちゃんは本当に勇者になったんだよ」
「そりゃ、驚いた。所で、今日は何のようだ? お前らが来る時は何かあるからな?」
俺はおやっさんに事情を話した。
「なるほど、どうりでレイがいないわけだ。それで最果ての地だが、徒歩でも船でも行けねぇ場所にあるって話だ」
「空からしか行けないってことかしら?」
「さすがアシュリー。カンがいいな」
「空からってどうやって行くんだよ」
「話は最後まで聞け。ウェンディーから北西にある島に伝説の召喚獣がいるらしい。そいつの背中に乗って最果ての地に行けばいい。幸いアシュリーもいることだし、何とかなるだろ」
「あたしに出来るかしら?」
「やれるさ。やってもらわにゃ、困るな。なぁ、隼人」
「大丈夫。俺達がついてる」
「それで、最果ての地の場所なんだが、はっきり言ってわからん。な~に、お前らが戻るまでには調べておくぜ」
「すまない。おやっさん」
俺達はおやっさんの話をもとに、伝説の召喚獣を探すことになった。
〈レイ。必ず生き返えらせるからな〉
「リン、船のある港街まで頼む」
「はい、は~い。皆掴まって~」
「それじゃ、おやっさん」
「おう! 頑張れよ」
こうして、俺達は船のある港街に一旦戻った。
レイ待ってろよ。 必ず生き返えらせてやる。




