死闘の果てにの巻
目の前に現れた者とは?
廃墟と化した街に淀んだ空気が流れ込む。
「我が名は(隼)ハヤブサ。見ての通り、お前の分身。すなわち、お前自身。さぁ、隼人よ。剣を抜け」
「俺の思った通りだ。ハヤブサ、その前に一つ聞かせてくれないか? 俺がお前に殺られたらどうなる?」
「いいだろう。教えてやる。我に肉体は吸収され、魂は永遠に地獄をさまようことになろう」
「なるほど……」
「聞きたいことは、それだけか?」
「あぁ」
「ならば行くぞ!」
ハヤブサは素早く間を詰め、斬りかかる。
俺も負けじと、剣を押し返す。
一進一退の攻防。
一瞬でも気を許したら、殺られる。
剣と剣がぶつかり合う金属音だけが、誰もいない廃墟に響きわたる。
「思ったより、腕が立つようだな。では、これならどうだ? 卍斬り!」
ハヤブサが卍斬りを繰り出す瞬間に、俺もまた卍斬りで、応戦する。
「卍斬り~」
激しくぶつかり合い、互いに間を取る。
「うぐっ」
俺の左腕から大量の血が吹き出る。
一方のハヤブサは鎧を掠めただけで、怪我はない。
「何だ、その情けない卍斬りは!」
左腕から吹き出す血を止血するも間に合わない。
「万事休すか……」
「その程度か? 我をがっかりさせるなよ。死ねぃ」
身動き一つ出来ず、俺は諦め静かに目を閉じた。
ハヤブサは勢いよく剣を振り上げ、俺に斬りかかる。
〈グサッ〉
「……、……?」
「諦め……ないで……くだ……さ……い」
目を開けると、身を呈してレイが俺を守っていてくれてた。
「レイーっ! どうして、ここに」
「仲間……でしょ」
「何で……何で俺なんかの為に」
「隼人……あなたが……す…………だ……から」
「レイ――――っ!」
レイは静かに息を引き取った。
「ぺっ! つまらないモノを斬ってしまった」
「おのれ、許さんぞ」
「おい、おい。言ったろ? 我はお前で、お前は我だと。我はお前の邪悪な心」
〈こんな時こそ、冷静になるんだ。怒りや憎しみは何も生まない〉
俺はレイの亡骸に、あの日のようにマントを掛けた。
〈必要ですか? 私必要とされていますか?〉
船上でのレイの言葉を思い出す。
〈俺にはレイが必要だった。仲間だから、大切な仲間だから〉
「うぉぉぉ」
眩い光が隼人を照らし、額に勇者の紋章が浮かびあがった。
「ま、まさか。お前はニセ者のはず」
「これで、終わりだ。食らえ、真・卍斬りーっ!」
聖なる力が宿った剣で、ハヤブサを斬りつけた。
「ぐぉぉぉ。まさか、我が殺られるとは……その力、真のモノなら、あやつを倒せるやも知れぬ」
ハヤブサは息を引き取ると、肉体は消滅し、魂は隼人に吸収された。
ハヤブサを吸収することで、悪の心が芽生えるかと懸念されたが、どうやら聖なる力で浄化されたようだ。
「レイ……守ってやれなかった俺を許してくれ……」
俺の涙がレイの頬に落ちる。
「お兄ちゃん~! お兄ちゃん~! もう、探したんだから。急に居なくなるんだもん」
「ごめん……」
「あれ? レイどうしたの?そんな所で横になって」
「ごめん……」
「どういうこと? ごめんってばかりじゃわからないよ」
「レイは俺を庇って、死んだんだ……」
「嘘でしょ。嘘だと言ってよ。ねぇ、お兄ちゃん……」
現実を受け止められないのは俺だけじゃない。
リンも同じだった。
俺は真の勇者になることができた。
しかし、その代償はあまりに大きかった。




