ベルナの街にての巻
ベルナの街にたどり着いたポンコツ。
教会を後にした俺は、仕事を探すことにした。
一応はニセ勇者という肩書きはあるが、そんなみっともない肩書きで飯は食っていけない。
汚い布の服を購入し、残金は50ゴールド。
このままでは食い倒れだ。
俺は街の中心部にある掲示板に目をやった。
「俺でも出来る仕事はないものか?あっ、これなら出来そうだ」
〈武器屋 店番求む。初心者歓迎〉
とりあえず俺は求人のあった武器へ向かった。
「いっらっしゃい。何を差し上げましょう?」
落ち着いた佇まいの店内。
店主はいかにも武器屋と言わんばかりの、体格のいい男だった。
「俺は客じゃない」
「するってぇと冷やかし?」
「いや、違うんだ」
俺はこれまでの経緯を語った。
「話はわかった。しかし、兄ちゃんよぉ、その汚い格好では店に傷がつく。ユニフォームがあるから、それに着替えてくれねぇか?」
「おぉ、それは願ったり叶ったりだ。おやっさん頼むわ」
俺がそう言うと、店主は一度奥に引っ込み、ユニフォームが入っているだろう紙袋を俺に渡した。
「着替えは奥の部屋を使ってくれ」
店主は奥の部屋を指差すと、別の客の対応にあたった。
奥の部屋で俺は渡された紙袋の中身を広げた。
「こ、これは?バニースーツ……」
こんなものが、ユニフォームなのかと疑ったが、生活がかかっていたので、俺は着替えることにした。
「どうっすか?おやっさん?」
「ぶーっ。おめぇ何してんだ。間違えた、それは違うんだ」
何が違うと言うのだ。
店主は慌てながら、別の紙袋を俺に渡しバニースーツを取り上げた。
「よし、準備は整ったな。値段表はここに記されている。お前は来た客に、その値段で売ればいい。わかったな?」
おやっさんはそう言うと、バニースーツの入った紙袋を大事そうに抱え、何処かに行こうとしている。
「おやっさん、何処に行くんすか?」
「ちょっとしたヤボ用だ。日暮れまでには帰ってくる。後は頼んだぞ」
そう言い放つと、路地裏へと消えて行った。
「おやっさん……あんた、一体……」
おやっさんの哀愁漂う背中を見送ると、俺は店番に精を出した。
チャーミングな武器屋のおやっさんに助けられたポンコツ。
果たして生き延びることが出来るか?