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ウェンディーにての巻

 この大雪は異常気象なのだろうか?

 それとも。

 ウェンディーの城までは一本道。

 しかし、僅かな間に深々と雪は降り積もり、道の境目がわからなくなっていた。


 普段なら数分で着くだろう距離を一時間かけ歩いた。


 灰色の城壁もすっかり雪化粧し、表門を守る数人の兵士も雪に悪戦苦闘しているようだ。

 俺はそのうちの一人に尋ねた。


「王様にお会いしたいのですが……」


「お、志願兵か? それならウェンディーの城下町を抜け石畳を真っ直ぐ行ってくれ。くれぐれも粗相のないようにな」


 兵士はそう言うと、雪掻きを始めた。

〈志願兵? 志願する気はないがとりあえず行ってみよう〉


 城下町の人々も、雪掻きに追われている。

 俺達は兵士に言われた通り、城下町を抜け石畳を目指した。

 やがて強固な佇まいの城が姿を現す。


「大きいお城ね。早く行ってみましょう」


 こっちは雪で足を取られ、ブーツの中はびしょ濡れだというのに、リンは元気だ。


 城門を守る兵士に案内され、ようやく城内へと踏み入れた。

 城内は気品のある赤い絨毯が敷かれ、丁寧に彫刻が施された支柱が並ぶ。



 謁見の間に通された俺達の前には、宝石に彩られた王座に、立派な髭を蓄え威厳のある面持ちの王が、こちらの様子を伺っている。


 俺達は王の前に膝間付き、顔を伏せた。


「よく来た、旅の者。その方、名は何と申す?」


「私はベルナより参りました隼人にございます。こっちがリンとアシュリーで、こっちがレイでございます」


「ほう、ベルナから」


「ご存知なんですか?」


「ベルナの鍛冶屋に古い知人がおるのじゃ。して、その方達ワシに何の用じゃ」


「志願兵を募集しているとお聞きしたので、足を運んだ次第です」


「う~む。残念ながら志願兵はすでに打ち切ったのじゃ。そなたらも見たであろう?外の雪景色を。ワシは何かの前触れと睨んだのじゃ。そこで、調査隊を結集し各地に向かわせのじゃ。それも、ついさっきな」


「そうですか……それは残念です」


「まぁ、待て。その方達、腕が立ちそうじゃな」


「あったり前じゃない」


「リン! 言葉を慎め」


「よい、よい。して隼人といったな、実は頼みたいことがある」


「なんでしょうか」


「ここより北に我が国の宝庫があるのじゃが、最近魔物が住みついて困っているんじゃ。さっきも言ったが城の兵士も志願兵もほとんど出払って頼める者がおらんのじゃ」


「お言葉ですが王様。こんな根なし草の若造に国の宝庫を任せるのは、如何なものかと……」


 間髪入れず王の側近の大臣が詰める。


「お前は黙っておれ!ワシは隼人に聞いておるのじゃ」


 厳しい言葉にひれ伏すと、大臣は一歩後ろへ下がった。


「王様。この隼人、何処までお力添え出来るかわかりませんが、必ずや良い報告が出来るよう努力する所存でございます」


「おぉ、やってくれるか? これが宝庫の鍵じゃ」


「では、早速行って参ります」



 重い空気からようやく俺達は解放され城を後にした。


「でも、いいの? お兄ちゃん、こんなこと引き受けて」


「この国を自由に動き回るには、これが一番いいんだよ」


 俺の言葉に三人は納得した。


 ウェンディーの城下町を抜けると、雪は更に激しく降り積もっていた。


「北に、私達の目指す宝庫にイヤな予感がします」


 ポツリとレイが言う。



 以前もそうだったが、レイの〈予感〉はよく当たる。


 予言まではいかないにしても、レイの言葉を信じ、俺達は細心の注意を払い王家の宝庫へ向かった。

 俺達は王家の宝庫へ向かった。

 レイのイヤな予感が気になるが。

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