船上の月明かりの巻
誰しもが抱く孤独感。
呪いの島を離れ、半日が過ぎ夜を迎えた。
漆黒に包まれた海は昼間とは違う顔を見せる。
雲の切れ間から時折見せる、ぼんやりとした月明かりの下、デッキに人影が一つあった。
レイだ。
レイは一人悩んでいた。
〈隼人達と出会って、孤独からは解放されたが、自分は本当に必要とされているのか〉と。
レイは自分に自信がなかった。
その繊細な性格ゆえ、心の壁を自ら作っていた。
レイが居ないことに気付いた俺はデッキに足を運んだ。
「どうした? レイ。眠れないのか?」
夜風を受け、レイの髪が靡く。
出会った頃より、だいぶ髪も伸びた。
「ええ。眠れなくて……」
レイは遠くを見つめる。
暫く二人の間に沈黙が続いた。
「風邪を引くといけない、そろそろ戻ろう」
俺は羽織っていたマントを優しくレイに掛けてあげた。
「必要ですか? 私……必要とされていますか?」
突然俺を直視し、そう言うと、頬に一筋の涙が伝う。
この旅で初めてのレイの涙。
「当たり前だろ? 俺達は仲間だ。これまでも、これからも」
「うん……」
か細い声で返事をすると、レイは俺の胸で泣いた。
「さぁ、もうすぐ夜が明ける。少しでも体を休めよう」
俺はレイをベッドルームに送ると、自分も床についた。
正直、驚いた。
常に冷静なレイにあんな一面があるとは。
だが、そんな一面を見せてくれたことが何より嬉しかった。
誰しもが孤独と戦っている。
俺は自分と照らし合わせレイに共感する部分があった。
そして、夜が明けた。
目の前には広大に広がる大陸が迫っていた。
強固な岩石を潜り抜け、浅瀬に辿り着き船を停泊させる。
港街は多くの人で賑わい、活気が溢れていた。
俺は昨夜のことが気になり、レイに目をやる。
心配とは裏腹にレイはいつもの振る舞いを見せる。
俺は胸を撫で下ろした。
港街には豊富な食材、武具が溢れていた。
他国との貿易も盛んで、世界中の物という物はここで手に入るという。
俺達は長旅に必要な食材、薬草などを手分けして調達した。
「よし、これだけ揃えば十分だろう。少し遅いが昼食にしよう」
四人でテーブルを囲み、新鮮な魚介類、それに小麦を使った料理を頂いた。
この地方ならではのスパイシーな味付け。質素な食事が常だった俺達には贅沢な食事だった。
「腹もいっぱいになったことだし、ウェンディーの城を目指すとするか。地図によると、ここからそう遠くない筈だ」
俺達が城に歩き出し始めた頃、黒い雲が青い空を隠し、天気が急変した。
やがて雨になり、雪に変わった。
温暖な気候のこの地方にはありえない現象。
「何かありますね」
レイが口を開く。
確かに何かあった。
三人は気付いてないようだったが、雨と雪に晒され再びおっぱいが透けていたのだ。
だが、レイの言いたいことはその事じゃないくらいわかっている。
「敵だな」
俺は三人をなめ回すように見てから、そう言った。
こうしている間にも、しんしんと雪は降り積もり人々はパニックに陥っていた。
「とにかく、ウェンディーの城に急ぐぞ」
俺達は雪の降りしきる中、ウェンディーの城へと急いだ。
突然の雪。
何かの前触れなのか?




