夢か幻かの巻
辿り着いた宮殿に待つものとは?
シリアスな回です。
魔物達を振り切り、額に流れる汗を甲で拭った。
宮殿内は黒い霧が立ち込め、カビ臭い匂いがする。
俺とリンは思わず顔をしかめる。
宮殿の奥へ進むと青白い炎と共に、巨大な影が行く手を遮る。
「お待ちしておりました。私はこの宮殿の主、デスブレーカーでございます。今夜は久しぶりに良い食材にありつけそうです」
デスブレーカーと名乗る男は、そう言うと長剣を俺達に向けて構えた。
どうやら、食材とは俺達のことらしい。
「やるしかないな」
稲妻の剣を抜き取り構えた。
先手を取ったのはデスブレーカーの方だった。
凄まじい速さで、斬激が頭上から襲う。
稲妻の剣を水平にし、かろうじて受け止めた。
「ほう、思ったより、やるじゃないか。今日は楽しくなりそうだ」
デスブレーカーは、明らかに戦闘を楽しんでいた。
幾多の戦闘を繰り返してきたが、こんな敵は初めてだった。
気を抜く間もなく、デスブレーカーは次の攻撃に移る。
降り下ろされた長剣が鎧を掠める。
「逃げてばかりでは、私を倒せんぞ」
デスブレーカーは不敵に笑う。
リンも魔法で援護しようとするが、間合いのとれない俺のせいで狙いを定められずにいた。
押されつつも、反撃のチャンスを伺った。
素早く地面を蹴りあげ、稲妻の剣を振り上げる。
デスブレーカーの脇をすり抜け、稲妻の剣は壁に突き刺さってしまった。
「くっ!」
「そこまでだな、観念しろ!」
長剣が俺の喉元に突き付けられた。
「ブリザド〈冷気呪文〉」
リンが背後から油断したデスブレーカーにブリザドを浴びせる。
一瞬怯んだ隙に、稲妻の剣を壁から抜き取り、再び構えた。
圧倒的に不利。
今までいかに仲間に頼っていたかが、わかった。
「お遊びはここまでだ。死んでもらおう」
「やれるもんなら、やってみろ!」
「笑止!」
デスブレーカーの長剣を受け流し、攻撃に転じた。
方膝をつきながらも、剣を振り抜き右足を捉えた。
体勢を崩したデスブレーカーに、更に攻撃を続ける。
全身に力を込め、渾身の一撃。
「卍斬り~!」
先の戦いで見せた必殺技をデスブレーカーに放つ。
稲妻の剣はデスブレーカーの中心を捉え、深々と斬り下げた。
デスブレーカーはもがき苦しみやがて動かなくなった。
それと同時に魔力が解けたのか、主を失った宮殿は崩れ始める。
「リン、逃げるんだ! ここは崩れるぞ」
リンの手を引き脱出を試みる。
脱出すると、宮殿は跡形もなくなり、霧は晴れ青い空が広がった。
「隼人~! リン~! 大丈夫?」
心配したアシュリーが俺達二人のもとに駆け付ける。
俺達には数時間に思えたが、実際は丸一日経っていたらしい。
船に戻った俺はレイとアシュリーに事情を話した。
「私もお兄ちゃんも無事だったということで、今度こそウェンディーを目指しましょ」
リンが楽天家なお陰で、皆に笑顔が戻った。
「出発~!」
再び船は大海原へと舵をきった。
「今度こそウェンディーを目指すぜ」
と、隼人が言っております。




