呪いの宮殿の巻
再び船は大海原へ。
洞窟から出ると、さっきの老人が俺達を待っていた。
「どうやら、リバイアサンを従えたようじゃな」
「はい」
俺達は口を揃えて返事をした。
「世界には幻の召喚獣もおるようじゃ。機会があったら、探してみるがいい。皆の衆、アシュリーを頼みましたぞ」
老人はそう語ると、背を向け集落に帰って行った。
「俺達も、船に帰ろうか」
集落には寄らない方がいいと言う、アシュリーの意思を尊重し足早に船へと戻った。
船に戻ると俺は地図を広げた。
「ここから東にある大陸にウェンディーの城がある。そこを目指そうと思う」
ウェンディーを目的地にしたのは理由があった。
ウェンディーは世界で一番大きい国で、色んな人種、民族が集まる場所。
今後の情報を集めるにはもってこいの場所だと睨んだからである。
果てしなく広がる青い空。
優しい風が、潮の香りを運ぶ。
俺達は暫し戦いを忘れ、デッキに出て日光浴をした。
久々に防具も脱ぎ捨て天日干しにした。
リンとアシュリーは下着姿のまま、はしゃぎ回り、レイは読書に明け暮れた。
俺はこの旅を振り返り物思いにふけっていた。
何もない所から始まって、リンと出会い、レイが仲間になり、そしてアシュリーに助けられた。
少しずつ自分を取り戻し、世界で何が起きているのかと視野も広く持てるようになってきた。
それはきっと〈仲間〉がいたからこそ、思えることだと改めて実感した。
俺はニセ者だけど、本物以上の物を手に入れたに違いない。
そんなこと考えていると、リンが大きな声を出す。
「お兄ちゃん~前方に大陸が見えま~す」
「大陸? そんな筈はない。ウェンディーのある大陸まではまだまだの筈だ」
自らの目で確かめてみる。
確かに大陸のような物が見える。
「何か悪い予感がします。離れましょう」
レイの予感を信じれば良かったのだが、食料が底をつきそうなこともあり、レイを除く三人は上陸を希望した。
大陸付近は深い霧に包まれ視界が悪い。
船を陸に横付けすると、立派な宮殿が目の前に現れた。
「俺とリンで食料の調達をしてくる。レイとアシュリーは船で待っていてくれ」
「了解です~」
アシュリーは返事をするとレイと一緒に船内に戻って行った。
「急いで調達するぞ」
「ぶ、ラジャ~」
「リン! お前なぁ」
呆れながらも、妹のようなリンを可愛く思えた。
〈年齢的に俺が年下になっちゃったけど〉
「お兄ちゃん~宮殿だよ」
思いの外、宮殿まではあっと言う間だった。
宮殿の前には何人かの兵士が警備にあたっている。
その一人に声をかけた。
「すみません、食料を買いたいんですけど……」
「そうですか。どうぞ、どうぞ」
特に何のチェックもなく、俺達は外門の中へ通された。
宮殿の内門までの途中に市場があり、沢山の食材が並んでいる。
「これだけあれば十分だろ。リン、そろそろ帰るぞ」
一通り食料の調達が済み、俺達は宮殿の外門を目指した。
「あれ? こんなに遠かったっけ?」
不意にリンが口にする。
確かにそんなに距離はなかった筈。
更に昼間だというのに、辺りは薄暗くなり霧が立ち込めた。
「キャ~、何これ」
リンの方を向くと、さっき購入した食材から腐敗臭がする。
食料と思っていたものが生ゴミに変化していく。
「どうなさいました? 旅のお方」
顔面が腐りかけた人とは言えない者が俺達に話し掛ける。
「リン、まずい所に来ちまったな」
「お兄ちゃん、戦うしかないようね」
「五月雨斬り~」
「ファイア〈火炎呪文〉お兄ちゃん、これじゃ、きりがないよ」
「確かに斬っても斬っても、わいてきやがる。よし、宮殿の中に一旦逃げるぞ」
迫り来る敵を、倒しつつ、俺達は宮殿内へと向かった。
またもやピンチを迎える隼人とリン。




