絶対絶命の巻
姿を竜人に変えたロックス。
絶対絶命だ~
ロックスは竜人に姿を変えた。
「この姿に変わったら、お前達は終わりだ。全てにおいて、パワーアップした俺様に怯えるがいい。さぁ、かかって来い!」
「お兄ちゃん、まずいよ……私達だけで、勝てる相手じゃないよ」
「そのようだな。でもなぁ、リン。男にはやらなくちゃいけない時があるんだよ。俺の代わりに石になったレイの為にもな。リン、お前は逃げてくれ。こいつは俺一人でやる」
「そんな、そんなの無理だよ」
「リン! 俺の言うことを聞け! 俺が死んだら誰が残りの四天王を倒すんだ。ベルナに戻って、おやっさんに伝えるんだ。わかったな?」
「わ、わかった」
リンは泣きながら、逃げて行く。
「ロックス! 俺が相手だ~。覚悟しろ」
「お前一人で? いいのか? あの女を逃がして。まぁ、いい。八つ裂きにしてやるわ」
ロックスの言っていたことは、ハッタリではなかった。
自分なりに、だいぶ修行を重ねたつもりだったが、所詮はニセ勇者。
それまで頑丈に思えた防具が、ロックスの攻撃に耐えきれず悲鳴をあげる。
精神も体力も限界に近付いていた。
「あれしかない。あれにかけるしかない」
修行中密かに編み出した〈卍斬り〉。あまりの破壊力にリンとレイの前では見せなかったワザ。
チャンスは一度限り。
ロックスが刀を振り上げる一瞬の隙が、その時。
その間もロックスの執拗な猛攻は続く。
わかってはいても、ワザを繰り出す間がない。
その時だった。
「あたしも助太刀させて」
「き、君は?」
「あたしはアシュリー。名もなき村の村長より、命令を受け助太刀に来ました。あたしの召喚獣で、ロックスを引き付けます。その隙に、あなたのワザを放って下さい」
〈シュゴシュゴ〉
露出度の高い、法衣に身を包み、リンに負けない巨乳ぶり。更に右手に持った杖を握り、上下にシュゴシュゴさせる。
助太刀してくれるのは嬉しいが、大人のエロさに俺は少し参っていた。それにあの杖をシュゴシュゴさせる動き。意味がわからない。
我に返り俺は問いに答えた。
「わかった。頼む」
アシュリーは腰まである長い髪をかき揚げ微笑む。
「大地と精霊の名の下に、汝、我に力を与えよ! 出でよゴーレム」
アシュリーがゴーレムを召喚すると、凄まじい地響きが起きる。
ゴーレムはロックスの前に立ちはだかる。
「なんだ? こいつは! 邪魔だ」
「今です」
アシュリーの合図と共に、俺は地面を蹴りあげワザの名の通り卍を切る。
「くらえ、ロックス! 卍斬りだ~」
ゴーレムに気を取られていたロックスは、まともに卍斬りを食らった。
翼はもがれ、全身から血が噴き出す。
「ぐぉぉぉ。この俺様が……」
ロックスは叫びながら、煙のように消え去った。
「アシュリー、ありがとう」
「いいえ。あたしなんて。それより何か落ちていますよ」
〈シュゴシュゴ〉
ファイアークを倒した時のように石が落ちていた。
鈍い茶褐色に光るその石を拾い上げだ。
「うぁぁぁぁ」
あの時と同じだ。また何かバグが修正されるのだろうか?
「お目覚めですか?」
「おお!レイ。元に戻ったんだな?」
「はい。助かりました。村人も元に戻っていることでしょう」
「そう言えばレイ、紹介するよ召喚師のアシュリー。俺達を救ってくれたんだ」
「話は隼人が眠っている間に、全てアシュリーに聞きましたわ」
「ちょっと、待って! 今何て言った?」
「ですから、隼人が……」
「戻ったんだ。俺の本来の名前。そうだ、俺の名前は隼人だったんだ」
「何を言ってるんですの? 隼人は隼人ですよ」
どうやらポンコツという名前の記憶は消えているらしい。
「そろそろ脱出しましょう。あたしに着いて来て」
〈シュゴシュゴ〉
「その前に聞かせてくれ、アシュリーのその杖をシュゴシュゴさせる仕草はなんなんだ?」
「ごめんなさい~。あたしの悪い、ク……セ。さぁ、脱出しましょう」
短いようで、長かったこの戦い。
ロックタワーは俺達の脱出した後、待っていたかのように崩れ落ちた。
「お~い、お兄ちゃん~」
逃がした筈のリンが俺に駆け寄る。
「お兄ちゃん~やったんだね」
俺に抱き付き、おっぱいを必要以上に擦り付ける。
レイは冷ややかな目で、アシュリーは羨ましそうな顔でそれを見ていた。
召喚師アシュリーの活躍でなんとかピンチを切り抜けた。
おまけに俺は本当の名前を取り戻した。
それはそうと、アシュリーのシュゴシュゴさせる癖が気になります。




