雌雄決すの巻
ファイアークとの一戦。
戦いの行方は?
「なんだその技は?このマントで、弾き飛ばしてくれるわ」
「一か八か……これが駄目なら、勝機はない」
ファイアークは真紅のマントで、身を守る。
灼熱と氷結を繰り返し、力の差はない。
「くそっ、これでどうだ!」
咄嗟に精神を統一し、ブリザド剣を更に強化した。
しかし、体にかかる負担は大きい。
一度外せば命はない。
「とどめだーっ!」
何本もの、氷の柱と共にファイアークを切り裂く。
「ぐぉぉぉ。この私が……負ける……とは。お前は一体……グファ」
ブリザド剣は心臓を貫き、ファイアークはその場に崩れ落ちた。
そして、ファイアークは霧のように消えてなくなり、その場所には真紅の石が残されていた。
俺はその真紅の石を手に取った。
「な、何だ。これは?」
全身に違和感を感じると同時に、心拍数があがる。
「うぐぐっ」
「お兄ちゃん~どうしたの?せっかく、悪者やっつけたのに……」
〈……気が遠くなる〉
「おい!しっかりしろ! ポンコツ! 本当にポンコツになってどうすんだ?」
「ん? ここは?」
「気が付いたか? お前、気を失ってたんだぞ」
「おやっさん、すまない」
「お兄ちゃん~? それより自分を見てみなよ。鏡、貸してあげるからさ」
今更疲れきった自分の姿を見る趣味はなかったが、リンに促され鏡を覗いた。
「こ、これが? 俺?」
何と戦闘前より年齢が若くなっていたのである。頭の片隅に残っていた記憶が少しだけ、よみがえる。
〈確か、この世界で目覚めた時、ポラポラさんが言ってたな。十三歳を入力ミスして三十歳になってしまったと。ファイアークを倒し、バグが解消されて十三歳に修正されたってことか?〉
よくわからないが、ファイアークを倒してバグが少し解消されたのは事実だ。
〈この先敵を倒していけば、バグを解消し俺が何者なのか分かるかも知れない〉
この時、俺はそんな僅かな望みを持った。
「おやっさん~! そんなことより、鍵だろ。鍵~」
「そうだったな。この先にあるはずだ」
しばらく歩くと、古ぼけた祭壇に、ひときわ眩い光を放つ魔法の鍵が奉られていた。
鍵は豪華な装飾が施されており、異彩を放つ。
「これだ。これが魔法の鍵だ」
「所で、おやっさん。その鍵で何を開けるんだ?」
「ウチの武器庫の鍵を無くしちまってな、そこに俺の私物があるんだよ」
どうせくだらない私物だろうと思ったが、俺は言わなかった。
少しだけど、自分を取り戻せたことが、俺を優しくさせたのかもしれない。
「さぁ、帰ろうぜ。おやっさん、リン」
リンは不満そうな顔をする。
「お兄ちゃんなのに、私より年下になっちゃったんだもん……ま、いっか。お兄ちゃんはお兄ちゃんだもんね」
俺はリンに何かされるかと、ビクビクしたが何とか丸く収まった。
ダンジョンを出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
「急いで帰るぞ、ポンコツ、リン」
おやっさんの言葉に同調し、ベルナの街へ急ぐ。
若返ったポンコツ。
ダンジョンを抜けベルナの街へ急ぐ。




