忍び寄る魔の手の巻
魔法の鍵を手に入れるため、旅立った三人だったが……
「おやっさん、来たぜ」
「おぉ、来たか? 早速例のダンジョンに行くぞっと言いたい所だが、今度ばかりはそうはいかねぇ。覚悟はできてるか?」
今の俺に迷いはない。何か目的がなければ存在の意味を否定するように思えた。
「勿論、覚悟は出来てる」
「私も行くからね。お兄ちゃんが守ってくれるしね?」
リンが俺の腕を掴み、巨乳を押し付けてくる。
あの一件以来リンは俺を〈お兄ちゃん〉と呼ぶようになり、言葉使いもマシになってきた。
〈お兄ちゃん〉
この響き、まんざらでもなかった。
「よ~し、出発だ」
地図を広げ、再度確認する。
ベルナの街より北西の山岳地帯を越えた先が、目的のダンジョンだ。
人々はそのダンジョンをこう呼ぶ〈屍の住処〉
その名の通り、多くの亡骸が散乱しているとのことだ。
そこにおやっさんの言ってた魔法の鍵が眠っている。
俺は不安より、好奇心が先立っていた。
自分でも信じられないほど落ち着いている。
出発して、およそ三十分。
この辺りの魔物は俺達に恐れをなしたのか、襲っては来なかった。
山岳地帯に入ると、強い風が行く手を阻む。
足場の悪いこの崖から、落ちたら一貫の終わりだ。
足元に細心の注意をはらう。
「お頭~! あれじゃないですか?」
リンが指差す方向には、ダンジョンの入り口らしきものが見える。
巨大な口を開け、まるで獲物を狙う魔物のような佇まい。
カラスの大群が俺達を出迎え、周囲には無数の屍が散乱していた。
「おやっさん、早く行こうぜっ!」
一方その頃……
ここはゲームの核マザーブース。
「あの小僧、なかなかやりますな、ポラポラ様」
「ここまでは私の筋書き通りですよ。しかし、思ったより力を付け過ぎたようですね」
「ポラポラ様、どうでしょう? 私に遊ばせてはもらえないでしょうか?」
「いいでしょう。但し殺してはいけませんよ。ファイアークさん。四天王の力を見せつけるのです」
「御意」
ダンジョンの中を探索する俺達は、巧妙に仕組まれたトラップに悪戦苦闘していた。
以前攻略したダンジョンとは訳が違う。
足元には、志半ばでこと尽きた亡骸の山。
その腐敗臭が辺りに立ち込め鼻をつく。
〈生きて帰れるのだろうか?〉と不安を煽る。
そんなことお構い無しにリンは元気だった。
「早く~。こっち、こっち。あれ?宝箱だ~、お宝。お宝~」
「リン逃げろ! そいつはミミックだ!」
おやっさんが叫ぶも、既にミミックはリンの喉元目掛けて飛び掛かってきていた。
「キャ~! 助けて」
急所は外れたもの、ミミックは更に牙をリンに向ける。
俺とおやっさんはリンの元に駆け付けた。
「おやっさん、リンを頼む」
俺はリンをおやっさんに任せ、詠唱に入る。
「全てを燃やし尽くせ。宿れファイア剣」
炎の宿った剣が、ミミックの本体を切り裂きながら、燃え上がる。
しかし、ミミックも負けてはいない。
痛手を負いながらも、鋭い牙をむく。
「これで、とどめだ!」
ファイア剣は十字を切り、ミミックを二つに切り落とした。
「ふぅ……やった。リン、リンは大丈夫か?」
「お、お兄ちゃん。ありがとう。大丈夫だよ、油断しちゃった」
おやっさんの特製の薬草で、傷は治まり大事には至らなかった。
「心配させるなよ」
「はい、はい」
「はいは一回だろ?」
俺とリンは見つめ合い笑った。
怪しい影が忍び寄る。
果たしてどうなるのでしょうか?




