昭和の日
井野嶽幌は、この日に勉強会をしようと言って、友人たちを家に呼んでいた。
「ゴールデンウィークって言うのに、勉強会かよ。どういうことなんだよ」
陽遇雅、星井出包矛、永嶋山門
「もうすぐ模試だしな。あきらめろ。今日は4月29日だしな」
「4月29日がどうかしたのか?」
雅が幌に聞いた。
「昭和天皇の誕生日さ。生物や科学に造詣が深かったから、科学の日という名前にしようかって言う話もあったぐらいさ。昭和時代は「天皇誕生日」として、平成に入ってからは2006年までは「みどりの日」として、今では昭和の日という名前の休日になっているんだ」
「昭和なんて知らないからなぁ…」
山門が鉛筆を指で回しながら、ぼんやりと宙を見ながら言った。
「まあな、平成生まれだしな。でも、こうやって休日になっているんだ。ちょっとぐらいは思いを馳せてみようぜ」
「そんなことよりも、今日はお前の姉ちゃんいないのかよ」
聞いたのは雅だ。
「姉なら今日は鈴の家に行ってるはずだから、ここにはいないよ」
「なんだ、つまんね」
つまらなさそうに雅が言った。