VI なんでここに俺の写真が
そのままリノンは健やかな寝息を立てて眠ってしまった。かなり無理をしていたらしい。俺はリノンを布団の上に寝かせる。
(リノン、悪い)
知り合いに聞いたところ、この頃の王都の女というのは好きな男がいれば部屋に写真を飾るものらしい。『推しの顔を見たらhappyな気持ちになるし』とよく意味のわからないことを同僚が言っていたのも耳にしている。
(やっぱり相手の男を探して吊し上げよう)
折角リノンの部屋に居るのだから、少しでもヒントを探したい。連日説教もしているからリノンからの好感度なら地に落ちているだろうし、もういっそのこと嫌われても構わない。
(リノンが幸せになるならもうそれでいい)
相手がどんな社会の底辺であっても、妻子があっても、絶対にリノンの傍に居るようにさせるつもりだ。一応、リノンからは相手の男に好意があるようだから、それで良いだろう。
(愛してる……か)
相手の顔を見たら一度顔面が腫れるくらいボコボコにしなければ気が済まないかもしれない。
俺は部屋をここで初めて見回す。あまりの殺風景さに驚きを隠せなかった。まるでここには長く居る予定がないと言わんばかりに、リノンの部屋には私物がない。魔力ポーションの空き瓶が山のように積まれている。年明けから数日はこれだけで乗り切っていたのだろう。寝具だけのベッドに簡易な衣装ケースと小さな机があるのみだ。
(机に一つだけ引き出しがあるな)
俺は躊躇なくその引き出しを開けると、中には一枚の写真が入っていた。
(……なんで俺の写真があるんだ)
それは俺が武術大会で優勝したときの横顔の写真だった。結局、リノンとは組めなかったが他の男と組んで参加したのである。
ここにこの写真があるということは――!
(本当はリノンも武術大会に出たかったんだな)
もし、武術大会以外の女人禁制ではない大会があれば、是非リノンを誘うことにしよう。
(まぁ、でも……)
この写真が捨てられていないということは、俺はリノンからそこまでは嫌われていないのかもしれない。
(相手が見つからないなら――)
俺は俺で腹を括る必要を感じた。
*
「……おはよう」
「おぅ。ご飯、出来てるぜ」
リノンが目覚めたとき、俺は出来立てのパエリアを作っていた。
「食材はどうしたんだ」
「聖獣に任せて買ってきてもらった」
リノンの狭い家ではそれなりに大きさのあるドラゴンである聖獣は入れない。買い出しを任せてそのまま家まで帰ってもらった。リノンは聖獣様になんて非常識なことを、と引いていたが俺の一族にとって聖獣は家族なので問題ない。
「まずは栄養を付けろ。なんで冷蔵庫の中に干し肉しか入ってねぇんだよ」
「あまり華美なものを食べると戦場で困る」
相変わらずストイックなリノンだが、俺はリノンを困らせることに決めたのだ。
「これは……美味しいな」
自慢ではないが料理の腕には自信がある。リノンとは逆の考え方で、俺はいつ野営になっても美味い食を食べられた方が力になると考えているからだ。
料理を食べるリノンに向かって、俺はこう切り出した。
「リノン、魔力供給が必要な間だけでいい。一緒に暮らさないか」




