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XIII ようこそトンデンス村へ


「ようこそ、トンデンス村――すなわち僕の故郷へ!」

 俺達は馬車に揺られて王都から遠く離れた南国の田舎、トンデンス村に向かっていた。

 あれから二年が経った。

「こんなにわかりやすく飛ばされるとはな……」

「隊長、良いとこのお坊ちゃまなのに左遷とか、ぷぷ」

「はっ倒すぞ田舎者」

 リノンの死の謎を調べる内に、俺達は魔工子宮プロジェクトの研究所が怪しいことに気がついた。リノンはどうやらこのプロジェクトを運営している家であるゾクレイ家の血を引いているらしい。そして、あの日死んでいた研究員はリノンの異母兄だという。そこまで調べたところで異動として辺境に飛ばされてしまった。奇しくも、アルベルトの故郷である。

「人里まではまだ距離がありますね。僕の産まれたこの地域は魔獣の被害が多くて――」

「その話は何度も聞いた」

「最近! 彼女からの手紙で強い人がやって来て助かってるって聞いたんです! シシー様って言うんですって。隊長の聖獣様と同じ名前ですよね」

「へぇ」

 聖獣(シシー)の名前は俺が付けた名前である。ロズウェルの関連の血を持つものは産まれてすぐに聖獣に出逢うが、誰にも被らない名前として俺が付けたのに被ってしまうとは。

(そういえば名付けの話、誰にもしなかったのにリノンだけにはしたな)

 青い空を見上げると、影が出来た。数秒後、地面から翼を生やした巨大な蛇が馬車を丸呑みにしようとしていた。俺がアルベルトから譲渡されたリノンの槍を構えようとしたそのとき。

『――』

 誰かが一瞬で蛇を魔法で黒焦げにした。肉の焼ける匂いがあたりに漂う。

「なんつー強さだ」

「うわぁ……」

 遠くの木の上に黒いフードを被った男が立っていた。

 一瞬、黒いフードの奴は俺のことを見た気がした。

「王都から派遣されたシグルド=フォン=ロズウェルだ。こっちは聖獣のシシー。よろしく頼む」

「村長ぉおおおおおおお! 皆ぁあああああ!! ただいまぁああああ!!」

「トンデンス村へヨウコソ〜。アルベルト、ウルセ」

 よく日焼けをした恰幅の良い村長に迎えられ、俺達はトンデンス村の中心地にたどり着いた。

 村長は歩きながら村のあれこれを教えてくれる。アルベルトは彼女のところに行くとかで早々に居なくなってしまった。

聖獣(シシー)様、アリガタイ。でも、うちの村もっと有難いシシー様イル」

「へぇ」

 人生でかつて見たことのない程のドヤ顔を見た。

(なんでこの村長がドヤってるんだ?)

 村の外れにある一軒家の前で立ち止まる。木でできた家で何故だか他の家よりも立派なのがわかった。

「彼女達ニハとても助けられテル。彼女達に迷惑をカケタラ――生キタママ焼ク」

「彼女達……? 女……?」

「シシー様! 王都カラ誰カキタヨ!」

 村長がドアを叩くと中から黒いフードを纏った男が現れた。俺よりも身長が高い。

「ありがとう村長。彼と話がしたい」

「さっきは助かった」

 黒フードの男は俺を家に招き入れると、無言で茶を淹れた。王都でよく飲まれている茶葉だ。

(もっとよくわからん草とかを飲まされると思ったんだが)

 トンデンス村の近くの村ではそういったものばかり飲んできた。紅茶をしげしげと眺める俺に黒フードは怪訝そうに問いかける。

「どうした?」

「いや……俺の好きだった奴がよく飲んでいた茶だと思って。懐かしい」

「その相手とは?」

 俺は首を振る。

「死んじまったよ」

「そうか……辛い思いをしていたんだな、シグルド」

「!」

 俺は名乗っていない。先程の村長には名乗ったがこいつにはまだ名乗っていないはずだ。

 それにこの男に見えるフード、低いが女性の声、強い魔術は――。まさか――。

「リノ……ン……?」

「久しいな。息災だったか?」

 リノンはフードを脱ぐと爽やかな水色の髪を見せた。


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