第2章:闇を裂く弓と荒野の誓い
水流で匂いを断った策略は、空からの監視によって無に帰した。アランは激しく呼吸しながら、森の密集した灌木を抜け、西へ向かって走り続けた。スカイ・レイスの叫び声はノクス追跡隊への確実な信号となり、その足音は刻一刻と近づいてくる。「くそっ、これでは夜明けまで持たない」アランは王家の指輪を握りしめ、前方に広がる岩だらけの荒野を見た。身を隠す場所はなくなるが、ノクスの密集隊形での進軍は難しくなる。アランは荒野へと飛び出した。荒野に出た瞬間、彼の背後から、地の底を這うような重い雄叫びが響いた。スカーウィグだ。獣人たちはその四肢を使って岩場を驚異的な速度で駆け上がり、アランめがけて跳躍した。アランは剣を抜き、迫るスカーウィグの群れに対して身構えた。
最初の一匹がアランに襲いかかった瞬間、甲高い弦の音が荒野に響き渡った。「ヒュッ!」光を帯びた矢が、先頭のスカーウィグの頭部を正確に貫いた。獣人は一瞬で動きを止め、その黒い血を岩場に撒き散らして倒れ伏す。アランは驚愕し、矢が飛んできた方向へ素早く視線を向けた。荒野のさらに西側、風に晒された巨大な岩の頂に、一人の人影が立っていた。フードを深く被り、その動きは風のように静かだった。その背中に担がれた弓は、人間には扱いきれないほど巨大なものに見えた。ノクス軍もその存在に気づき、警戒の声を上げ、その人物に向かって突進した。エルフの弓使い、リアナは、一言も発することなく、流れるような動作で矢を番え、三本を一気に放った。矢は三つの異なるノクス兵の喉元を正確に射抜き、彼らを動きを止める。その矢には、森の精霊の力、**「精霊の矢」**が宿っていた。ノクスの闇の魔力をわずかに中和する、清浄な光の力だった。
リアナの正確無比な攻撃により、ノクスの追跡隊は一時的に混乱した。アランはこれを好機と見て、リアナの元へ駆け寄る。「助かった!何者だ、あなたは?」アランは息を切らせながら問うた。リアナは岩の頂から軽やかに飛び降り、彼と目を合わせた。その瞳は澄んだ琥珀色で、一切の感情を読み取れないほど冷たい。彼女はフードの奥から、静かで厳しい声で言った。「私はアイリオンの森の狩人。闇の病を狩る者。あなたのことは知っている、シルヴァンディアの血筋」彼女の言葉には、敬意ではなく、むしろ軽蔑のニュアンスが含まれていた。「王国の血筋が何だというのだ。私は今、生き残るために戦っている」アランは苛立ちを抑えながら答えた。「だからこそ問題なのだ」リアナは低い声で言った。「あなた方人間が大地を荒らしたからこそ、闇は再び世界を覆い、私の故郷は毒に侵された。王族の血筋など、私にとっては何の価値もない」。
ノクス軍が態勢を立て直した。「我々は逃げなければならない。地図にある古代の図書館へ向かっている。賢者アルカスを探すためだ。あなたもノクスを狩るのなら、一時的にでも手を組むべきだ」アランは提案した。リアナはアランの旅人の剣、そしてその背中に隠された、布に巻かれた折れたる剣の存在に気づき、その表情が一瞬、わずかに揺らぐ。「……賢者アルカス。その名は聞いている。彼は私たちエルフが守るべき知識の番人だ。いいだろう。私はあなたを王としてではない、闇を討つ獲物として利用する」リアナは冷酷に言い放ち、森の奥深くを指差した。「追跡隊は今、三方から包囲網を敷こうとしている。私に従え。王族の血が、その鈍い足で私に遅れをとらなければの話だが」アランは反論の言葉を飲み込み、剣を鞘に収めた。このエルフは信用できない。だが、彼女の弓術は本物であり、この窮地を脱するには彼女の力が不可欠だった。互いに不信を抱きながら、自由の連合の最初の二つのピースは、闇に覆われた荒野で、不確かな共闘の誓いを交わした。
設定メモ:登場要素解説
自由の連合(主人公と仲間たち)
| 名前 | 種族 | 役割と特徴 | 本文での描写 |
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| **アラン・ヴォリアン** | 人間(王家の血筋) **放浪者**。滅亡したシルヴァンディア王国の最後の王の末裔。追跡術、サバイバル術に長ける。 | 故郷を失った怒りと復讐心で旅立つ。指輪と地図を託される。 |
| **リアナ** | エルフ | **弓使い、闇を狩る者** | アイリオンの森出身の狩人。人間、特に王族を信用しない。ノクスを狩るという共通の目的でアランと共闘する。 | 光を帯びた「精霊の矢」でノクスを射抜く。琥珀色の冷たい瞳を持つ。 |
III. 闇の勢力の兵種
| 兵種名 | 種族/属性 | 本文での描写と脅威 |
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| **ブラック・ガード** | 堕落した人間 | ノクス軍の主力となる重装歩兵。里の襲撃と追跡を担当した。 |
| **スカーウィグ** | 闇に汚染された獣人 | 俊敏で凶暴な獣人。四肢を使って岩場を駆け上がる。リアナの最初の標的となった。 |
| **スカイ・レイス** | 空中の異形 | 影を纏う空中斥候。上空からの監視と追跡を行う。アランを小川で見つけ、地上部隊に信号を送った。 |




