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第四十三話 許可

「この土曜日は、学校に行ってきます――お母様」


 黒松ヒマリは、視線を落とした。

 母親は鏡越しに、包丁を突きつけるかのような目つきで睨みつける。

 アイブロウで眉を書き足し、淡々と訊ねた。


「今までずっと休みは家で勉強をしていたのに、どうして?」


 ヒマリは鞄の取っ手を握り締める。


「後輩から勉強を教えてほしいと頼まれたのと、首席入学した子と勉強できる機会ができました。彼女は一年生ですけど、大学で習う範囲まで網羅している子です。目標の大学に着実に進めると思いました」


 化粧の香りと、(から)い煙の臭いが部屋に漂う。

 数分の沈黙のなか、ヒマリは返事を待った。


「……中間テストの成績も良かったし、今回は許可してあげる。その代わり、期末でもちゃんと結果を出すのよ。もしものことがあったら――」


 母親は上体を捻ると、ヒマリを鋭く睨んだ――横目で一瞬、紙巻きタバコを見る。

 爛れるほど真っ赤な熱を帯びた先端から、ボロっと灰が落ちていく。

 ヒマリは背中や肩に力を込め、ジッと紙巻きタバコを静かに見つめる。


「分かってるわね?」

「はい、もちろんです」


 淀みない受け答えを聞いた母親は、顎を上げて微笑む。それから再び鏡に向かった――。

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