第四十話 お誘い
「というわけで、ノア先輩、今度の土曜日勉強会をしましょう」
学校前のコンビニにて、新商品のプリンを食べているノアは、ぽかん、となる。
目の前には文字いっぱいの手帳を広げるミク。
純粋無垢にニコッと笑って返事を待っている。
濃紺のブレザーがテーブルを囲むのに、一人だけ黒のセーラー服がいる。
「ノアってホント、いろんな友達いるよねー」
ノアの友人たちが揃って頷いた。
「あの、ミクちゃん、えと……勉強、会?」
ノアにとっては非常に気まずい再会だった。
ミクの前のめりの姿勢に圧倒されて、イスごと後ずさる。
「はい、みんなで集まってするんです」
「みんなって、ヒマリちゃん?」
「マナカ先輩もですよ」
「えぇっ!?」
突拍子の無い提案に、ノアは立ち上がった。
イスがほんの少し後ろに跳ねた。
「それでですね、ノア先輩の方からヒマリ先輩に伝えて頂けませんか? 今週の土曜日、学校前に集合と」
「う、えぇー!?」
さらに驚いてしまう。
「誘う時はワタシの名前を出してください。そうすればあとで、必ずワタシを問い詰めにきますから」
「え、で、でもマナカちゃんとヒマリちゃんって……」
「もちろん、把握しています。マナカ先輩に直接お話を伺いましたので」
逃げ場のない周到さに、ノアは言葉を失う。
友人たちは蚊帳の外で、各々好きなカップケーキを食べている。
目の前には、手帳とペンを手に持つミクの、きらきらと眩しい眼差し。
ノアは微かに息を漏らし、肩の力を抜いた。
「声、かけるけど……期待、しないでね」
「ありがとうございます。大丈夫ですよ、ノア先輩の誘いならきっと乗ってくれます」
確信に満ち足りた頷きを前に、ノアはもう一度、小さな溜息をつくしかなかった――。




