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第三十九話 企む後輩

「——つまり、迷惑をかけないように絶交したわけですね」


 マナカは丸めた新聞紙を片手に腕を組み、祖父を軽く横目でジッと見た。

 

「そういうことだ。いいかいミクちゃん、変なことに首を突っ込んでヒマリちゃんを悲しませることはしたらいかんぞ」


 ミクは薄っすら赤くなった目元に小さく笑みを浮かべて頷いた。


「もちろんです。教えていただきありがとうございました。それとマナカ先輩」

「……なに?」

「ワタシは他人どころか自分の感情にさえ曖昧です。でも、ほんの少し分かった気がします」


 マナカは静かに喉を唸らし、黙り込んだ。


「ですが、このままで良いとはやはり思えないのです。今の日常に少し、色を足したいと思っています」


 淡くも優しい口調で、ミクは手帳を開く。

 ページは既に所狭しと文字が敷き詰められ、余白が見つからない。

 マナカは眉を僅かに歪ませた。


「アンタ、どうしたいわけ?」

「ヒマリ先輩はワタシに次いで成績が良い方です。親にある程度信頼を得ているはずですよ」

「まぁ……多分」

「ワタシが通う学校は土日も、勉学のために開放されていまして、他校の生徒を連れて勉強してもいいんです――自由なんですよ、意外と」


 何が言いたいのか、マナカの眉間にさらに皴が寄る。


「土曜日に勉強しましょうよ。マナカ先輩も是非」

「あのさぁ、絶交中だって言ったじゃん。余計なことしてヒマリに何かあったら、アタシは――」

「絶交を取り消してもらいましょう。元に戻るって意味じゃありませんよ」


 反省したのかしていないのか、手帳とペンをそわそわ動かすミクの手元を見ても掴めない。

 マナカは頭を抱えてしまう。

 祖父は少し黙っていたが、大きく頷く。


「せっかくのチャンスじゃないか、マナカ」

「じいちゃんまで――」

「ほっとくと暴走するぞ?」


 眉の皴が緩む言葉に、丸めた新聞が広がった――。

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