第三十話 雨の日
放課後のある日、そわそわと落ち着かないノアは、コンビニで待ち合わせをしていた。
色とりどりのデザートを何度も見比べる。
しばらく熟考したあと、小さく頷いた。
二個のデザートを購入し、カウンターの奥側にある飲食スペースへ。
窓際のテーブル席に腰を下ろし、ふと外を眺めた。
雨粒が窓の外をつたう。
埃を絡め取りながら、音もなく落ちていく。
《ヒマリちゃんと初めて会った日も、初めて話した時も、こんな雨だったなぁ》
歩道には、傘を差した猫背気味のサラリーマンや、カバンを頭上に走る学生が行き交う。
テーブルに置いた、ティラミスのカップケーキとロールケーキをちらっと目をやる。
封を開けないままに、友達を待ち続けた。
しばらくして、黒傘を差したセーラー服のヒマリがコンビニに向かって歩いてくるのが見えた。
三つ編みおさげに丸メガネと、凍てつく瞳と我関せずの表情を浮かべている。
ノアは緩みそうになる唇をなんとか堪えた。
ヒマリはコンビニの前で傘をたたみ、傘置き場に差し込んだあと入店。
耳に残る軽やかな音楽が鳴った。
「ヒマリちゃん」
急いで立ち上がったノアは、冷たい表情を崩して微笑むヒマリと見つめ合った。




