第二十七話 テスト結果
中間テストの結果が一斉に、各生徒のタブレット端末に送信された。
自分の点数と各クラスの平均点、入学時に割り振られた番号が表示されていく。
高得点を取った順に並ぶ画面を、丸いレンズの奥で凍てついた瞳が覗いている。
「私たちのクラスだと、多分……あの子だよ」
教室のあちこちから聞こえる、妬みを含んだ棘のような言葉。
「ダメだって、そういうのはいつものところで――」
笑みを抑えるように呟いている。
「あぁごめんごめん。それよりさ、あの一年生のせいで、お母さんがもっとうるさくなったの」
「私も、テスト全部トップで、図書室に入り浸って、いつも関係ない本ばかり読んでるなんて、ホント余裕ぶってるのあの態度……」
「リストに追加しとく?」
クスクスと大きくなる。
ヒマリは静かに立ち上がった。
注がれる視線を我関せずの表情で振り払う。
階段を素早く音もなく下りた先に、ミクが純粋無垢な瞳と、口元に笑みを浮かべて待っていた。
「ヒマリ先輩」
「なに?」
ヒマリは早足で通り過ぎていく。
靴箱からローファーを取り出す。
「ノア先輩と寄り道ですか?」
昇降口で靴を履き替えるつま先が止まる。
凍てつく眼差しを少し崩し、ミクを睨んだ。
「貴女ね……」
「少し前にお話しました。とても素敵な方ですね、ヒマリ先輩とよく似ています」
「自制というのを覚えた方がいいわ」
「自覚はしていますよ、もちろん」
手帳を胸に、困り眉で目を細めた。
「残念だけれど、今日は真っ直ぐ帰るの」
靴を履き終え、コツコツと静かな音が響く。
ミクは、ヒマリの背中を早足で追いかける。
「じゃあ帰りに書店に寄りましょうよ」
「駄目」
「ノア先輩はいいのに、ワタシはダメなんですか?」
ジト目で恨めしく見上げられる。
ヒマリは少し目を閉ざす。
「……本屋は好きじゃないの。あと貴女のやり方もね」
凍てついた瞳は真っ直ぐ帰路を見つめたまま呟いた。
ミクは手帳を顎先へ宛がった。
「それは、ワタシのことが嫌いということでしょうか?」
後輩の質問に、ヒマリは眉をひそめ、大きく息を吐き出す。
「貴女も、ノアも羨ましいわ――私には眩し過ぎるのよ」




