第十一話 まちぼうけ
愛沢ノアはコンビニの飲食席で、茜色が差す夕暮れを窓から眺めていた。
テーブルには、抹茶ティラミスとカフェラテのМサイズ。
通学路を歩く同校の生徒、猫背気味に歩くサラリーマン、車道側を走る自転車の群れ。
黒いセーラー服と学ランの生徒が何人か見かけ、ノアは視線を落とす。
濃紺のブレザーに襟シャツ、ストライプ柄ネクタイ、プリーツスカート、紺のスクールソックス、厚底スニーカー。
足先を交差しては、ゆらゆら、リズムをとって揺らす。
《友達に……なれないのかな》
じわりと這い寄る不安が静かに騒ぎ立っている。
抹茶ティラミスをスプーンで掬い、ぱくっと一口、濁る気持ちを溶かそうとした。
「おいしい……」
自然と口から零れる感想。
ほろ苦い甘さの後も収まらない騒めきに、もう一度窓の外を見た。
目がゆっくり、大きく開いた。
黒いセーラー服、三つ編みおさげを白いリボンで結んだ少女が、コンビニの駐車場と歩道の間で立ち止まっていた。
丸メガネの奥で凍てついた瞳と目が合う。
待ち時間全てが吹っ飛ぶほど沸きあがる高揚と微かな暗さに、テーブルから勢いよく立ち上がった。
カフェラテがカップの中で波立ち、ティラミスの欠片が零れてしまう。
透んだ輝きをもった瞳に、ヒマリだけを映す――。




