第六十二話 お茶会
広間でクローリーが、お茶を淹れていると、ブラッドとノアがやって来た。
「ちょっと、早かったっすか? ノル兄ちゃんは?」
「ノルなら、ハンター協会に呼び出されて行ってる。イヌたちの世話をしてくれそうな人が数件見つかったらしい。帰って来てから食べるって言ってた」
ノルはクローリーに出掛け「残ったのでいい」と言っていた。
「ウチのじーちゃんトコのイヌ高齢だから、ウチだったりして」
「……ありえるな」
少し遅れて、アルがやって来た。
「リリさんとリズは?」
いつもなら手伝うはずのリリがいないとブラッドはクローリーのほうを見た。
「二人は多分、サリーさんを誘ってるんじゃないかな」
「…………」
サリーの名前を出すと、ノアの顔が曇った。それを見逃さなかったクローリーは、ノアがブラッド経由で事情を知ったのだと思った。
「言いたいことは分かる」
「……何ですか?」
唯一、事情を知らないアルの顔に疑問が浮かんでいる。
「知らない奴が、いたほうがいい」
「そうだな」
「?」
アルは、まだ疑問が頭に浮かんでいそうな顔をしているが、ブラッドとクローリーのやり取りで、聞かないがいいと思ったようだ。
「焼いたクッキー持ってきたんですけど…」
「あっ、アル兄ちゃんのクッキー」
「沙紺さんと雨紺さんにアドバイスを貰って、東の素材を使ったクッキーを作ってみました。玉子なしクッキーの作り方も教えてくれたので、次作ってみようと思います」
「アルのレパートリーが増えるのは、良いことだ」
「ブラッド看守長は、当直の時に食べるお菓子が唯一の楽しみっスもんね」
「カステラのレシピを貰ったので、ケーキ系にも挑戦しようかと」
「帰っても、楽しみが増えたっす」
「だが、東の鮮度のいい菓子は食べられない」
「団子とか大福は、次の日には固くなるから賞味期限が一日だし」
「焼き立て…また来る」
「そのために、俺たち資格取るっす」
「食い意地、恐るべし」
お菓子談義をしていると、リリとリズがサリーを連れてやって来た。
「遅れてゴメンね」
「サリーおねぇちゃん、げんきないの。おやつたべたらげんきになる?」
「そうね」
メンバーが集まり、お茶会が始まった。
「とりあえず全種類買ってみたけど、団子どれにする? とりあえずひとり三本」
醤油のみたらし、こしあん、粒あん、草だんご、南瓜を練り込んで南瓜餡が乗っている南瓜団子、三色団子、黒ごまタレのごま団子と七種、みたらしと、あんこ二種は一本ずつオマケしてもらった。
「きいろいの〜なにあじ?」
「カボチャ味だよ」
「じゃあそれにする」
「ん~私はそうね〜コレかな。ヨモギの香りがする。あと、この粒のないあんこ」
リリとリズは南瓜・草だんご・こしあんを選んだ。
あんこは夕食のデザートに数回出ているので、みんな慣れたようだ。
「俺は、そうっすね〜三つの色気になるっす」
「……俺も」
ノアとアルが同時に三色団子を選んだ。ノルも三色団子を選んだので、やはり三つ子だなとクローリーは思った。
ノアは、三色団子・みたらし・南瓜を選び、アルは三色団子・粒あん・ごま団子を選んだ。
ブラッドは、まだ悩んでいる。
「まだ全種類あるから…」
「とりあえず、粒あん・こしあん・醤油」
「とりあえず…」
「一本ずつ多いから」
「店主にオマケしてもらったから、ブラッドに別にして渡そうかと思ったけど、選べるほうが良いかなと」
「お団子お米で出来てるから、太るっすよ。ご飯が美味し過ぎて、七キロくらい太ったっす」
どうやら、ノアは自分がどれくらい太ったか分かるらしい。
「甘いモノは別腹だ」
「サリーさんは?」
「え~と、この黒いのは?」
「ごまです」
「……それでは、これと、コレと…」
サリーは、ごま団子・こしあん・草だんごを選んだ。どうやら、サリーは食べたことのないものは、聞くクセがあるらしい。
「お茶は、煎茶とほうじ茶、玄米茶の三種類用意したよ」
「なんか、いい香りがするわね」
リリは、ほうじ茶を手に取った。
「このお茶…何処かで嗅いだことがあるような」
ブラッドは玄米茶に興味があるようだ。
「お米を炒って入れてるから、お煎餅とかアラレみたいな香りがついてる」
「――それだ。焼き立て煎餅」
どのお茶を取ろうか迷っているアルがクローリーに訊ねた。
「飲み合わせとか、あるんですか?」
「万能は煎茶、三色団子と草団子にはほうじ茶、みたらしには玄米茶かな」
「リズのために、お団子を串から外して小さく切りたいんだけど、どうしたらいいかしら」
「取り皿と、お菓子専用の切るやつがあるよ」
団子で盛り上がっているところで、クローリーは、アルの作ったジンジャークッキーを口に運んだ。
「コレ美味いな。妹の作った硬めのクッキーは冬に食べるけど、アルの家のクッキーは柔らかめなんだな」
クローリーの妹白瓜がいる修道院のクッキーは、保存食なので油分が少なめで硬めにできているらしい。
「口に合ったようで良かったです」
「コッチも食べよう」
クローリーは茶で口を直してから、東の素材を使ったというクッキーを口に入れた。
「…………」
「なんだろう、なんか爽やかな香りがする。この香りは…山椒かな」
「正解です」
滞在中、最後になるであろう茶会は和やかに過ぎていった。




