第六十一話 誘い
神社へと帰ったクローリーたちは、天の報告により、ノルとイヌのリーダーはハンター協会へ、クローリーはブラッドと共に大巫女の九十九の元へ呼び出されていた。
「母様…みたらし団子です。皆と食べてください」
「おお〜獣人の村の団子か。あの店、独身の先代が亡くなり、店を手伝っていた甥が後を継いだ二代目だが、二代目の団子も美味いんじゃよ」
「俺たちに、用とは?」
ブラッドは勉強していたらしく、呼び出されて少し不機嫌になっている。
「いまここは、防音の結界が張ってある。天から、サリーという女の報告があった」
「……何かあったんですか?」
「先日、大陸で起こった、ホストの傷害事件で逮捕された女が、サリーと一緒に泥棒をやったと供述したそうでな。騎士団が指名手配したと、ハンター協会からの連絡が天にあった。船の乗客リストにサリーの名があって、ここにいるということがバレとるので、我々に早めの処遇をとの話じゃ」
「……」
クローリーは考えた。帰るまではまだ四日ある。
「俺たちと一緒に大陸に帰るではダメですか? このことがバレると、逃亡の恐れがあり危険です」
神罰の邪魔はできないが、指名手配されたことがバレて、逃げられるのはもっと面倒だ。
「ハンター協会側からは、黒瓜お主の判断に任せるそうじゃ」
軽くため息交じりにブラッドが言い放った。
「それなら帰る日が来るまで、どこかの部屋に監禁でも…」
「どう言って、監禁するんだよ。アンタ泥棒って言うのか?」
「…………」
「騙されたのは、俺だから最後まで付き合ってやるのが筋だ」
「――仕方ないな」
こうしてクローリーとブラッドは大陸へ帰るまで、サリーと普通に接することになった。
◇◇◇◇◇
部屋に戻ったクローリーは、ノアの部屋へと行った。
「団子土産に買ってきたんだけど、食べるか?」
「食べるっす〜勉強で糖分足りなくなってたところっす」
「じゃあ、お茶を用意するから、三十分後に食事広間な」
「え~今くれるんじゃないんっすか…」
「団子パーティーしようかと思ってな」
「三十分後っすね。分かったっす」
ブラッドとノルとリリとリズには話をつけているので、あとはアルとサリーだ。
アルは調理場にいるだろうと、クローリーが調理場へ行くと、スパイスの香りがした。
「なんかイイ匂いがするな」
クローリーの呟きを聞いた沙紺が寄ってきた。
「アルくんがクッキー焼いたんですよ」
「ジンジャークッキーの匂いがする」
煮物の味見をしていた雨紺がクローリーのほうを向いて言った。
「アルさんの得意な焼き菓子だそうですよ」
「俺が、何か食べたいって言ったから」
クローリーは、調理場を見渡したがアルの姿はない。
「アルは?」
雨紺が、煮物に醤油を少し追加し、煮物の入った鍋を揺すりながら答えた。
「カステラを作ってみたいそうで、玉子を取りに養鶏所に行ってます。そろそろ戻ると思いますよ」
「噂をすればですよ」
「……帰ってたんですね。クローリーさん」
後ろから掛けられた声にクローリーが振り向き、調理場の入口を見ると、籠に一杯の玉子を入れたアルが立っていた。
「団子を土産に買ってきたから、食べるかなと思ってアルを探してた」
「食べます」
「じゃあ、二十分後に食事広間で。クッキーも一緒に食べよう」
アルは、クローリーにサプライズするつもりだったのか、クッキーという言葉に顔が赤くなってソワソワしている。
「サプライズしようとしてたんですよね〜」
「…………」
「作ってくれて嬉しいよ」
「だから、女の子にモテんるですよね〜黒瓜様」
沙紺が余計なツッコミを入れ、アルを誘い終えた。
残るはサリーだ。監視を任せたブラッドによると、部屋からほぼ出ていないそうだ。クローリーはサリーの部屋の前で、軽く息を吸い込み、戸越しに話しかけた。
「サリーさん。お団子をお土産に買ってきたので食べませんか? アルの焼いたクッキーもあります。十分後に食事広間で」
サリーの返事はなかったが、食事広間で待つことにした。




