第六十話 急転
天が社務所で、受け付けの仕事をしていると、ハンター協会東支部の者がやってきた。
胸に顔写真の入ったハンターカードを、名札代わりにぶら下げているので、ひと目で分かる。耳が茶色いウサギ獣人の女性だ。
「神社の方に、ご報告があります」
「なんでしょう?」
「こちらに宿泊している、ノル様からご依頼頂いた犬の雇い先の件について、数件反応があったので、ノル様にハンター協会にお越し頂くようお伝え下さい」
「分かりました」
「もうひとつ、サリーという女性をご存知ですか?」
「…………」
ただならぬ雰囲気に、どう答えていいのか言葉に詰まると、ウサギの女性は淡々と言葉を続けた。
「先日大陸でホストの瑠矢という方が、白猫の女に刺された事件がありまして、その刺した女を騎士団が逮捕したところ、サリーという女泥棒の犯行を供述したんです。一緒に組んで数件盗みに入ったと。騎士団はサリーに指名手配をかけ、船の乗客リストにサリーの名があることを確認しました」
天は彼女の手の火傷は神罰の烙印だということに気がついていたが、本人の前で言うわけにはいかないので、気がつかないフリをしていた。
「……彼女は現在、ウチの神社にいますが、怪我をしていて、そのショックで話せる状況にありません」
「治療院で治療なさいますか?」
「いえ、私こう見えても特級の治癒士なので、怪我のほうは治しましたが、一歩間違えば亡くなるかもしれない様な事故だったので、塞ぎ込んでしまっています」
懐にある特級治癒士の資格証明書を見せた。天はキノコ以外の、多数の毒物の血清や中和剤を作れる毒の専門家でもある。
「そうですか…本来ならハンター協会で身柄を拘束したいところですが、黒瓜様が帰郷していらっしゃるので、黒瓜様が大陸にお帰りになる時でも構いません」
「大巫女の九十九様と黒瓜様に相談の上、彼女の処遇を決めさせていただきます」
「分かりました。早めのご連絡を」
「ええ」
天は去るウサギ女性の背を見つめ、大きく息を吐いた。
「ふぅ…」




