第四十九話 依頼完了
美波ちゃんを花街前まで送り、神社に帰った俺は母様に『青龍の泪』を渡し、汗と塩を洗い流すため俺たちは温泉に入った。
「やっぱり、温泉は落ち着くな」
「ブラッド看守長が汗だくで、先に出てきた時は驚いたっす」
「あの後、涙と汗を乾燥させるの大変だった…」
青龍は、美夜子ちゃんの心中話をしばらく引きずり、三十分以上も泣き続けていたのだった。
「クローリーさんの、お姉さんと妹さんが凄いのは分かりました」
「ダンナ。俺たち今晩のご飯抜きでいいっすか? 美波ちゃんにボタン鍋とかいうのに誘われたっす」
「いいよ。俺から料理番に言っておく」
「やっぱりイノシシ狩ってたとはな」
「鳥料理も美味しいっすけど、ジビエっすよ」
「神社と寺院は、四足の食べ物を食べないから、食べてきたらいいよ。美波ちゃんところのお座敷は料理も一流だし」
「美波ちゃん、ノル兄ちゃんも誘っていいって言ってたっす」
「俺が彼女の前で三兄弟の話をしたからな」
「ブラッドは行くのか?」
「俺も行く。ボタン鍋が気になるからな」
「お座敷体験。東に来たなら一度はしたほうがいいしな」
「でも、幻術は、こりごりっす」
思い出した様にブラッドが呟いた。
「そういえば、大巫女様は、もう一つ依頼があるって言ってたな」
「それなら、俺たちがダンジョンに行っている間に、天とノルと雨紺と犬たちで片付けたらしい」
「え〜どんなのか、気になってたんすけど」
「何だったんだ?」
「海岸の漂着物を片付ける仕事だよ。海亀の産卵場所になるから、年に一度片付ける」
「天によると、犬たちがいたから早く終わったらしい。アル以外は残りの日は遊んでいいそうだ」
「やったっす」
「……」
「まぁ、まだ『青龍の泪』の品質鑑定が終わってないから、報酬は後で山分けな」
素材系の報酬は質と量で決まるので時間がかかる。
「働いているほうが落ち着くので、気を使わなくていいです」
「アル兄ちゃんは、休日もあんまり出掛けないっすからね」
「出掛けないで何してるんだ?」
「…………」
「俺が部屋に、たまたま行ったらクッキーを焼いてた」
「時々、お菓子作ってます」
「そこらに売ってるのより美味い」
「ノルの手芸といい、お前ら兄弟家庭的なんだな」
「俺くらいすっよ。じーちゃんに趣味が男っぽいって言われるの」
「料理番の手伝いをしてるんだし、お菓子焼いてみたらどうだ? 食べてみたい」
「それ、アリっすね」
「分かりました。雨紺さんに言ってみます」
「クローリーのダンナ。本当に、お座敷行かないんっすか?」
「個人的な家の仕事があるから、俺もう上がるわ。お前ら楽しんでこいよ」
青龍の泪を母様に渡した時、レオンの船が難破して生死不明らしいという話と、もう一つ気になる話を聞いた。
「……」
不審がるブラッドの視線を振り切って、俺は温泉を出た。




